『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』くぼしまりお著(KADOKAWA)

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50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット

『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』

著者
くぼしま りお [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784041095867
発売日
2021/08/02
価格
1,650円(税込)

書籍情報:openBD

『50代になった娘が選ぶ母のお洋服 魔法のクローゼット』くぼしまりお著(KADOKAWA)

[レビュアー] 宮部みゆき(作家)

シニア女性が輝く装い

 本書は優しいファッションの指南書だ。様々なファッションアイテムが、著者のくぼしまさんの手になる色とりどりのイラストと、美しい写真の数々で紹介されている。

 しかし本書が「魔法」である所以(ゆえん)は、くぼしまさんがそもそも「誰のために」これらのスタイリングを始めたのか、というところにある。それはくぼしまさんのお母様、『魔女の宅急便』などで知られる作家の角野栄子さんだ。

 八十歳を過ぎたころ、角野さんがくぼしまさんに言った。「毎日のお洋服を考えるのが面倒になっちゃった」。

 おしゃれを楽しむことが大好きで、若い頃からファッションに対してこだわりを持っていたという角野さん。くぼしまさんはそんなお母様のためにコーディネイトを始めた。そしてすぐに気がついた。実は角野さんはおしゃれが面倒になったわけではなく、体力がなくなっただけだった。そして、「母が欲しいと思う服が、まったくといっていいほど売っていなかった」。

 私事に引きつけてしまって恐縮だが、私は六十歳、私の母は八十七歳だ。くぼしまさんがお書きになったこの一文の意味が、びんびんわかる。同じことを、私も何度も思った。プレゼントしてあげたいけど、母が着られるおしゃれな服がない、と。街に溢(あふ)れるお洋服は、若いお嬢さんたちのしなやかな体躯(たいく)に合わせてデザインされており、顔色がくすんできたり、背中が丸まってきたり、腕や足が上がりにくくなってきたシニアの女性たちのことまで考えてくれていない。ゆくゆくシニアになる自分も、いつかはこういう寂しい思いをすることになる、と。

 でも、もう大丈夫。世のシニア母と娘さんたち、本書を手にクローゼットの扉を開きましょう。シンプルなワンピースこそ魔法のアイテム。カラフルなコーデはワントーンが基本。キャンディボックスを開けたみたいに、きらきらするファッションの知恵が飛び出してきますよ。

読売新聞
2021年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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