『「女性天皇」の成立』高森明勅著(幻冬舎新書)

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5
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「女性天皇」の成立

『「女性天皇」の成立』

著者
高森明勅 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784344986336
発売日
2021/09/29
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

『「女性天皇」の成立』高森明勅著(幻冬舎新書)

[レビュアー] 苅部直(政治学者・東京大教授)

安定的皇位継承へ提案

 先般のご結婚の例に見られるとおり、女性の皇族は、皇族でない男性と結婚した場合、皇族の身分を離れることになる。現行の皇室典範がそう定めているからである。だが現在の皇族の構成がそのままであれば、やがて男性一人のみになってしまうのではないか。ここ二十年以上指摘されてきたように、日本の国家制度の中心にある皇位の継承が、いまや危うい。

 今年の三月に発足した「『天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議』に関する有識者会議」は、今後の方向性として、女性・女系による皇位継承は議論せず、〈1〉「一代限りの女性宮家」の新設と〈2〉「旧宮家系子孫の養子縁組」との二つを軸に検討するとした。しかしこれは、皇族の人数をさしあたり確保するにすぎず、皇位の安定的な継承という本来の課題から逃げている。本書で高森明勅は、無為無策を続ける政府の姿勢をきびしく批判する。

 先の〈2〉は皇族ならぬ国民の中に、世襲による特権をもつ集団を新設することになり、憲法の原則に違反する。〈1〉もまた、一代限りなら皇位継承者の確保にはつながらず、もしつなげようとするなら、女系による継承を認める必要がある。本来は、飛鳥・奈良時代に多くの女性天皇が即位した事例のように、女性そして女系による継承も含むのが、東アジアの他国とは異なる日本の天皇のあり方にほかならない。高森は、古代史・皇室制度史の研究の蓄積に基づいてそう説明している。

 そもそも、皇位継承の資格を男系の男子に限った明治の皇室典範以来の制度が「異常なまでに窮屈」で、伝統にもそぐわないのである。高森は女性天皇・女系天皇・女性宮家を可能にすべきだと説き、皇室典範の改正を具体的に提案している。評者もまったく賛成である。衆議院議員が入れ替わった国会でも、この問題について真っ当な議論が闘わされることを、切に望みたい。

読売新聞
2021年11月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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