誰でもいつでもカきヌける性春

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なぜオナニーはうしろめたいのか

『なぜオナニーはうしろめたいのか』

著者
赤川 学 [著]/小堀 善友 [著]/シオリーヌ(大貫詩織) [著]/Schoo [著]/TENGAヘルスケア [監修]
出版社
星海社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784065250457
発売日
2021/10/27
価格
1,100円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

誰でもいつでもカきヌける性春

[レビュアー] 林操(コラムニスト)

 著者が3人いて、赤川学は東大大学院の社会学の教授、小堀善友は泌尿器科の医師、シオリーヌこと大貫詩織は性教育がテーマのユーチューバーにして助産師。そして題名が『なぜオナニーはうしろめたいのか』

 そう紹介すると、意識高い高~い系の伝道者による若年層向けのタダしい性の入門書かと誤解されそうながら、さにあらず。子作り世代から孫育て世代までの幅広い層の読者が、いい具合にくだけた専門家たちから本当の話、新しい話を聞ける稀少な一冊です。

 特にありがたいのは、3人のプロによる寄稿や鼎談ではなく、各自がインタビュアーに問われて答える形式であること。それぞれ1章ずつ、社会学者は古今東西の文化における自慰観の変遷を、医師は勃起・射精障害の実際とマスターベーションの関連を、助産師はセックスの際の同意の大切さを語るわけですが、聞き手がいるから話が難しくならず読みやすい。

 60代でもソロ活動に勤しむ男がけっこういるとか、閉経後の女の潤滑不足に手慰みが有効とか、オナニーなんて大昔の話と嘯く年代に役立つネタもいろいろ得られるし、そういう世代の子・孫にとっては、男由来の不妊の根っこに、床オナ・脚ピン等々のタダしくない自涜の習慣があるなんて情報が有益じゃないか?

 この新書は、“先進的な自慰用品”で世界に知られるTENGAの関連会社が監修してるけれど、内容が自慰礼賛に偏っていたりは全然しません。念のため。

新潮社 週刊新潮
2021年11月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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