天も配剤を間違える超ド級のケセラセラ

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徳光流生き当たりばったり

『徳光流生き当たりばったり』

著者
徳光 和夫 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163911793
発売日
2021/08/04
価格
1,540円(税込)

書籍情報:openBD

天も配剤を間違える超ド級のケセラセラ

 先日、明石家さんまの若さについて「AKBの一人や二人妊娠させられる」と評し炎上した著者。齢80となる彼が、自らの人生を振り返り、仕事、家族、自分について語ったのが本書。

 長嶋茂雄が好きすぎて、読売ジャイアンツの中継がある日テレのアナウンサーを志望。長嶋茂雄と美空ひばりの前だけは極度に緊張するが、それ以外の人間には、どんなお偉いさんでも全く動じないという、ギャグ漫画の主人公みたいな持ち前のキャラで、アガる成績優秀者たちを尻目に採用試験を楽々クリア。入社後は、長嶋に近い野球中継の仕事を希望するも叶わず、興味ゼロのプロレス担当に。興行で出張が増え、巨人戦を見に行く時間が取れず本気で会社を辞めかけるが、ジャイアント馬場と親しくなったことでプロレス愛が萌芽。中継の面白さに目覚めると、歌謡番組、バラエティ番組からも声がかかり、人懐こいキャラと当意即妙な実況技術がやがて「ズームイン!!朝!」に繋がる。

 その後の報道番組で挫折しフリーになるが、それが「人懐こい」「涙もろい」といった、既存の「ビジネス徳光」の看板を下ろすきっかけとなり、より自然に振舞うことができるようになったと。いやー、何もなくても十二分に自然体だと思うが。何しろ、スマホはおろか未だにガラケーすら持ったことがない。なのにコロナ禍でギャンブルに行けなくなると、タブレットから馬券を買うことをいきなり覚え、定期預金を崩してつぎ込み、いつかは生命保険も……と慄く。モットーは、まじめでも不まじめでもなく「非まじめ」。その心は「肩に力を入れず、価値観に縛られない」ことだそうで。なるほど、それが冒頭の発言に繋がると。本書内でも、かつてインタビューした女子体操選手との再会を「体型は砲丸アスリートかのようになっていましたが」と報告するなど、爆弾表現が散見。しかし、初期の認知症である妻との、明るくも同じ会話の繰り返しを楽しむ著者にとって、炎上なんて、全くもってどうでもいいことなんだろう。全ての業界人が喘ぐコンプライアンスの壁にも雲煙過眼。生き当たりばったりのオメガの集大成がここに。

新潮社 週刊新潮
2021年11月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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