『山岳気象遭難の真実』大矢康裕著 吉野純監修(ヤマケイ新書)

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ヤマケイ新書 山岳気象遭難の真実 過去と未来を繋いで遭難事故をなくす

『ヤマケイ新書 山岳気象遭難の真実 過去と未来を繋いで遭難事故をなくす』

著者
大矢康裕 [著]/吉野純 [監修]
出版社
山と渓谷社
ISBN
9784635510752
発売日
2021/09/11
価格
1,100円(税込)

書籍情報:openBD

『山岳気象遭難の真実』大矢康裕著 吉野純監修(ヤマケイ新書)

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 著者は、企業の山岳部に属しつつ気象予報士となり、山岳気象の研究を通して山岳防災活動に取り組む登山家。過去の痛ましい遭難事故の気象状況を、気象庁の最新の解析技術を用いて精密に分析・再現する。

 遭難の時と所の具体的な刻々の気象変化とともに、どこで気象を読み誤ったのか、遭難と生還の分かれ目などについて、鮮やかに解き明かす。さらに、どうすれば遭難を避けられたかまでを、新田次郎『聖職の碑』で有名な木曽駒ヶ岳遭難事故などの事故ごとに述べている。

 爆弾低気圧・豪雨・落雷・台風・豪雪・異常高温などのメカニズムを正しく知り、その変化の予測や緊急対応をあらかじめ準備すること、そして過去の遭難をしっかり教訓としておくことを求めている。また、温暖化など将来の気候変動があっても、山岳の厳しい局地気象はなくならないことも指摘する。

 かつて山の天気を女心にたとえる向きもあったが、不幸な遭難事故を二度と起こさないためにも、山岳気象の科学的な理解の必要性を主張する著者の熱意には共感を覚える。

読売新聞
2021年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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