『日米の絆 元駐米大使 加藤良三回顧』加藤良三著、三好範英聞き手・編(吉田書店)

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日米の絆

『日米の絆』

著者
加藤 良三 [著]/三好 範英 [編集]
出版社
吉田書店
ジャンル
社会科学/政治-含む国防軍事
ISBN
9784905497950
発売日
2021/07/22
価格
3,520円(税込)

書籍情報:openBD

『日米の絆 元駐米大使 加藤良三回顧』加藤良三著、三好範英聞き手・編(吉田書店)

[レビュアー] 国分良成(国際政治学者・前防衛大学校長)

同盟支えた外交美学

 伝統的な意味での外交とは、国際関係における交渉とその方法や技術として理解されている。交渉は人間同士の行為であり、外交ほど人の要素が大きいものはない。外交の基本は人だ。

 本書を通読すると、そこには黒子役に徹しながらも、強い国益意識に徹する人間加藤良三の外交美学が広がっている。本書はインタビューにもとづく加藤の貴重な外交証言だが、実直でウィットに富んだ発言に魅了される。

 43年にわたる外務省勤務、うち21年の在外勤務で15年半が在米勤務、駐米大使としては2001年から6年7カ月に及ぶ。加藤が安全保障に関心を抱くことになった契機はエジプト勤務。いつどこから危機が訪れるかもしれぬ中東世界には、安全保障の「鳥瞰(ちょうかん)図」はなく、「虫瞰図」しかないと痛感。

 その後の外交人生はほぼ対米関係。特に大使時代はジョージ・W・ブッシュ大統領の8年間と重なる。大統領やパウエル国務長官との会話では、加藤も大好きな大リーグの野球話がいつも場を盛り上げてくれたが、ラムズフェルド国防長官は野球より寿司(すし)だった。加藤の対米外交には心から信頼できるキーパーソンがいて、そこから輪が広がった。米国はダニエル・イノウエ上院議員、リチャード・アーミテージ、日本は椎名素夫代議士だ。

 加藤によれば、外交官は「外交戦略家」「外交実務家」「外務公務員(国内事務)」の3つの側面がある。元駐米大使の松永信雄がそのすべてを備えたモデルのようだが、元駐タイ大使の岡崎久彦は優れた外交戦略家ではあったが、外交実務家や外務公務員ではなかったという。

 「外交に飛躍はない」。それは駅伝のようなもので、次走者に渡すまでの区間を走る僥倖(ぎょうこう)を得たにすぎず、自身も「区間新記録」はなかったという。とはいえ、加藤良三が外交官として走り抜けた区間においては、日米同盟の強靱(きょうじん)な筋力が作り上げられた。

読売新聞
2021年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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