『夢を見るとき脳は 睡眠と夢の謎に迫る科学 When Brains Dream 』アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド著(紀伊国屋書店)

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夢を見るとき脳は――睡眠と夢の謎に迫る科学

『夢を見るとき脳は――睡眠と夢の謎に迫る科学』

著者
アントニオ・ザドラ [著]/ロバート・スティックゴールド [著]/藤井 留美 [訳]
出版社
紀伊國屋書店出版部
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784314011860
発売日
2021/08/31
価格
2,420円(税込)

書籍情報:openBD

『夢を見るとき脳は 睡眠と夢の謎に迫る科学 When Brains Dream 』アントニオ・ザドラ、ロバート・スティックゴールド著(紀伊国屋書店)

[レビュアー] 中島隆博(哲学者・東京大教授)

気づきもたらす創造性

 人は夢を見る。それでも、これだけ身近なものであっても、夢とは何であって、なぜ夢を見るのかはよくわかっていない。その謎に迫ろうとするのが本書である。著者たちは夢を「睡眠に依存する記憶処理の一形式」だとして、「NEXTUP」というモデルを提案している。すなわち、「可能性理解のためのネットワーク探索」というものだ。重要なのは、夢において探索されるのが「弱い連想」であるということだ。その日に生じた新しい記憶について、脳は「関連の薄いほかの記憶」を検索し、「通常なら思いもよらない結びつき」を夢において実現する。夢は「NEXT UP(次に来たる)」ものを発見するような、創造性や洞察力に繋(つな)がる気づきをもたらすのだ。

 確かに目覚めている時でも、ぼんやりして休息をとっている時に、思考が整理されたり何かをひらめいたりすることがある。著者たちによると、最近の研究では休息時の脳は何もしていないのではなく、「マインドワンダリング(とりとめのない思考状態)」にあり、活発に動いているのだという。

 そうであれば、「弱い連想」に基づく夢の創造性を活用することもできるかもしれない。ドリーム・インキュベーションといったやり方も紹介されているので、関心のある方はお試しあれ。

 それ以外にも、夢に関与する方法が示されている。慢性的な悪夢に悩まされる人にはイメージリハーサル療法なるものがあるし、明晰(めいせき)夢という夢を見ながらこれは夢だと認識できる状態を見るためのトレーニングも紹介されている。

 記憶処理において重要な働きをする夢であるが、それでもわからないことだらけだと著者たちは考えている。というのも、夢の研究で答えを探していることは、「ふつうの意識でもまだ答えが見つかっていない疑問」だからだ。例えば、昨日起きたことをどうやってなぜ記憶しているのかといったことだ。「夢の研究は、意識という大がかりな研究の先鋒(せんぽう)となるかもしれない」。今後の研究の進展を夢見て待ちたい。藤井留美訳。

読売新聞
2021年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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