『世界「失敗」製品図鑑 「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道』荒木博行著(日経BP) 

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世界「失敗」製品図鑑

『世界「失敗」製品図鑑』

著者
荒木 博行 [著]
出版社
日経BP
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784296000395
発売日
2021/10/15
価格
1,980円(税込)

書籍情報:openBD

『世界「失敗」製品図鑑 「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道』荒木博行著(日経BP)

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

恐れず挑戦 企業の勇気

 1960年代半ば、評者がまだ中学生の頃、我が家の愛車はトヨタ自動車工業(当時)の「パブリカ」であった。休みの日に家族一同であちこちドライブに出かけたのは良い思い出だ。しかし、本書ではそのパブリカが「失敗」製品として取り上げられている。なぜか。思うように売れなかったからだ。安価な大衆車が渇望される時代に開発を始め、販売まで6年を要した結果、燃料計やサイドミラーさえ標準装備から外した質素さが、高度経済成長下で急速に豊かになった大衆が車に対して抱く期待から乖離(かいり)してしまう結果になったということだ。

 本書は世界各国の企業における20の失敗事例を解説する。そこでは「高い期待値を持ってスタートしながらも、想定通りの結果を出せずに途中で挫折せざるを得なかった製品・サービス・事業」が失敗として取り扱われる。「20世紀のマーケティング史における最大の失敗事例」と言われたコカ・コーラ社による1985年のニュー・コーク発売、1999年ソニーによるペット型ロボットAIBO(アイボ)発売、2011年任天堂の新型ゲーム機「Wii U」(ウィー・ユー)発売、などいずれも興味深い事例だ。失敗への経緯、原因、示唆するものなどがコンパクトにまとめられ、有用な情報が無理なく吸収できる。失敗が単に失敗で終わらずその後の違う形での成功に結び付いている事例も多く、それぞれの企業の懐深さを感じさせる。例えば、冒頭のパブリカにおける失敗はカローラの開発につながっている。

 成功や失敗という結果としての事実が織りなすのが企業の歴史である。そこで企業に求められているのは、単に同じ失敗を繰り返さないということに止(とど)まらず、一つの失敗を次の成功に結実させていくしぶとさと粘りなのであろう。失敗を恐れず挑戦する組織的勇気を持った企業こそが発展する、と本書は示唆しているように思う。

読売新聞
2021年11月19日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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