『図書館を語る 未来につなぐメッセージ』山崎博樹編著(青弓社)/『公共図書館を育てる』永田治樹著(同)

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公共図書館を育てる

『公共図書館を育てる』

著者
永田 治樹 [著]
出版社
青弓社
ジャンル
総記/総記
ISBN
9784787200785
発売日
2021/10/21
価格
2,860円(税込)

書籍情報:openBD

図書館を語る

『図書館を語る』

著者
山崎 博樹 [著、編集]
出版社
青弓社
ジャンル
総記/総記
ISBN
9784787200778
発売日
2021/08/18
価格
2,860円(税込)

書籍情報:openBD

『図書館を語る 未来につなぐメッセージ』山崎博樹編著(青弓社)/『公共図書館を育てる』永田治樹著(同)

[レビュアー] 稲野和利(ふるさと財団理事長)

発信、集客 新たな可能性

 2020年現在、公共図書館は全国に3316館あり10年間で見ると微増だが、公共財政の逼迫(ひっぱく)による図書館予算削減や職員数減少、デジタルシフトなど人々の情報行動の変化などから、逆境とも言える状況にある。両書に共通するのはそのような状況に根差す危機感であり、「資料提供」という図書館機能の一部だけに着目することなく多様な機能を活用し融合させ、地域や住民との関係性を深めることによって道を切り開いていくべきだ、という問題意識である。近年、都市郊外から中心市街地の複合施設内に図書館を移転・新設するケースが増えている。図書館の持つ情報提供機能や集客機能をまちづくりに生かそうという発想であり、成功事例も多い。例えば、両書が取り上げる岩手県紫波町のまちなか再生事例は出色だ。3Dプリンターを設置する図書館が増えているし、貸し出しを行わない図書館など多様化も進む。

 『図書館を語る』には、長年図書館の仕事に携わってきた編著者による、図書館関係者との対談・鼎談(ていだん)・座談が収録されている。図書館に関係する仕事に対して強い自負を持ち、一方で利用者の目線をきちんと意識している人たちの発言から、図書館業務を支える人材育成の重要性を再認識した。「図書館は成長する有機体」という言葉が印象深い。

 『公共図書館を育てる』は、デジタル時代の公共図書館の未来像を考察する。出発点は人々やコミュニティーとの関係性である。特に北欧など海外の先進事例が参考になる。予算削減など困難な環境にあって、職員がいない時間でも図書館利用を可能にした「オープンライブラリー」という持続可能性向上に資する取り組みや、「図書館ルネサンス」と称される動きから学ぶことは多い。

 この夏、『図書館を語る』でも紹介されている福島県須賀川市の市民交流センターtette(テッテ)内の図書館を訪れる機会があった。そこには本もあるがそれ以外の何かがたくさんあって、何時間いても疲れないであろう気持ちのいい空間が存在していた。また来たい、と思った。

読売新聞
2021年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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