『風をこぐ』橋本貴雄著(モ・クシュラ)

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風をこぐ

『風をこぐ』

著者
橋本貴雄 [著]
出版社
モ・クシュラ
ISBN
9784907300050
発売日
2021/09/28
価格
3,520円(税込)

書籍情報:openBD

『風をこぐ』橋本貴雄著(モ・クシュラ)

[レビュアー] 読売新聞

 著者が12年を共に過ごした一頭の犬・フウとの日々を切りとった写真集。著者の温かな視線に、フウが応えてくれているような262点に、目が奪われた。

 2005年、福岡の路上ではねられ、著者が保護したフウ。手術によって一命を取り留めたが、脊髄を損傷し、後ろ脚に障害が残った。リハビリを重ねて歩けるようにはなったが、排せつはコントロールできなくなった。巻末のエッセーには、学校や仕事に通いながら著者が一人で世話していた様子がつづられるが、楽ではなかったに違いない。

 ただ、フウに関しては別。つらい境遇で大変そうだと思うのは、人間の感情移入なのかもしれない。フウの表情から悲壮感はうかがえず、生きるとは何かを考えさせられる。

 大阪、東京、ベルリンと、転居した先々で、一人と一頭は一緒に歩き続けた。だが、犬の一生は短い。フウはやがて自力で立てなくなり、車いす姿に。毛のつやや目の輝きも、少しずつ失われていった。フウがいなくなった散歩道や広場の写真が、何とももの悲しい。(佑)

読売新聞
2021年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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