『だいありぃ 和田誠の日記 1953~1956』和田誠著(文芸春秋)

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だいありぃ 和田誠の日記1953~1956

『だいありぃ 和田誠の日記1953~1956』

著者
和田 誠 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784163914466
発売日
2021/10/05
価格
3,300円(税込)

書籍情報:openBD

『だいありぃ 和田誠の日記 1953~1956』和田誠著(文芸春秋)

[レビュアー] 木内昇(作家)

 生前未発表の故人の日記を読むことには、背徳感がつきまとう。日記とは本音の集積。誰しも他人には見られたくないだろう。けれど、イラストレーター・和田誠氏の遺(のこ)した『だいありぃ』は例外と言いたい。当時の手書き文字そのままに印刷されたこの本には、音楽や映画をこよなく愛し、際だった画才を持った一青年の日常が、色褪(あ)せることなく息づいているのだ。

 記されるのは、1953年から56年まで、和田氏17歳から19歳までの日々である。『ジョルスン物語』に夢中になって、足繁(しげ)く映画館に通う。洋盤を求めてレコード店を渡り歩く。ジェイムス・ステュアートに手紙を書いて、返事がくれば欣喜(きんき)する。純粋に好きだと思うものに没頭する様子があまりにも輝いていて、なぜだか目頭が熱くなった。

 友人が映画館で密(ひそ)かに撮った場面写真に狂喜した、との記述に懐かしさを覚える。録画もダウンロードもできなかった時代、心赴くままに出掛け、そこで出会った多くを吸収し、自分なりの価値観を育んでいく青年の姿に、人生を自由に楽しむことの偉大さを改めて教わった気がした。

読売新聞
2021年11月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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