『藝人春秋Diary』
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精緻ゆえの分厚さと律儀なオチ 日記芸人の本領発揮!
[レビュアー] 立川談四楼(落語家)
500ページを超える大部です。登場人物は芸能界のみならず政界にも及び、本誌のライバル週刊文春に連載された60作分のボリュームです。
本文の後に『その後のはなし』が加えられ、これがまた精緻で、つまり相当な推敲を重ね、更に分厚くなっての上梓です。各登場人物の似顔絵を描いた江口寿史は「オヤジばかり描かされている」と愚痴ったそうですが、ひょいと美人女優などが挟まれますのでご安心を。
芸人という稼業や徒弟制に興味のある方にお勧めの一冊ですが、うっかり読み始めるのは危険です。のめり込み、睡眠不足となり、仕事に支障をきたす可能性大だからです。買うだけ買い、年末年始の休みにじっくり読むことを提案します。そういう本です。
巻頭と巻末に芸能界の大先達・古川ロッパの言葉が記されます。それぞれが「1960年12月4日――。『日記は俺の情熱、そして業』」「1958年8月2日――。『俺は日記をつけるために生きているのだ』」。『古川ロッパ昭和日記』全4巻(晶文社)から引いたもので、それは芸能史であり昭和史でもあり、400字詰原稿用紙にして3万枚以上という途方もないものです。
著者はそのロッパに挑んでいます。著者の日記歴は小学校2年に始まり、1997年からはブログ形式で20年以上、のべ1万日以上の日記を公開していて、本書のまえがきにおいて、肩書きを『日記芸人』と名乗ると宣言しているのです。
記憶力だけではありません。日記を参照し、資料等で確認をした上での発表で、その正確さがあるがゆえに、各章ごとの律儀なオチが効いているのです。
著者の師匠ビートたけしは外せません。他に私の印象に残ったのは和田アキ子、野中広務、樹木希林といった人たちですが、多士済々の中からあなた好みの人を、ゆっくり時間をかけて探ってください。