『3人のパパと3つのはなたば』
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【児童書】『3人のパパと3つのはなたば』クク・チスン作、斎藤真理子訳
[レビュアー] 正木利和(産経新聞編集委員)
■子供たちを愛するパパ
花束を花屋で買う機会というのは、人生にこれまで何度あっただろうか。ふと思い返してみたのだが、同僚の異動のときなど、これまで片手の指ほどしかない。周囲に聞いても、同じようなものだった。
この本に登場する3人のパパは、みんな「キム」という名字なのだけれど、それぞれ宅配便の運転手、小児科の医師、建設会社の課長と仕事はまちまちで、今日も忙しく一日を過ごしている。ところが、その多忙な日に、3人のパパは仕事の合間や昼休みにそれぞれが花束を買う。
花束を脇に置きながら、やっと仕事が終わる。しんしんと雪が降る中、パパたちは家路へ…と思ったら、みんなが寄り道する。行き先は子供たちが通う、小さな音楽会が行われている同じ幼稚園。花束を贈られた子供たちも、贈ったパパたちも浮かべるのは笑顔だ。
仕事に追われる3人の姿は、どこか身につまされる。だからこそ、子供たちに読んでほしい。パパたちは毎日たいへんだけれども、君たちをこんなにも愛している。(ブロンズ新社・1540円)
正木利和