『インターネットは言葉をどう変えたか デジタル時代の<言語>地図 Because Internet』グレッチェン・マカロック著(フィルムアート社)

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インターネットは言葉をどう変えたか

『インターネットは言葉をどう変えたか』

著者
グレッチェン・マカロック [著]/千葉敏生 [訳]
出版社
フィルムアート社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784845920280
発売日
2021/09/25
価格
2,420円(税込)

書籍情報:openBD

『インターネットは言葉をどう変えたか デジタル時代の<言語>地図 Because Internet』グレッチェン・マカロック著(フィルムアート社)

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

「打ちことば」の誕生

 「ネットの普及でことばは変化しましたか」と質問を受けることがあります。従来の「書きことば」「話しことば」は、基本的には変わっていないと思う。でも、ネットは新たに第3のことばをもたらしました。キーボードやタッチパネルで入力する「打ちことば」です。

 「打ちことば」とは、従来の整った書きことばとは別物で、本書の表現に即して言い直せば、カジュアルな書きことばです。それは一体どんなものか。著者は、ネットのことばの実像をさまざまな面から論じていきます。

 たとえば、頭字語の使用。英語では笑いを表すとき、フレーズの頭文字を並べて「lol」などと書きます。1980年代にチャットから生まれたこの書き方は、若い世代では単なる笑いの表現でなく、相手に賛成したり、雰囲気を和らげたりするのに使うといいます。

 あるいは、各種の絵文字。とりわけ使われるのは顔と手の絵文字だそうです。著者はその理由を、絵文字がジェスチャーの役割を果たすからだと指摘します。日常会話と同様、カジュアルなネットの書きことばでも、絵文字の顔や手によるジェスチャーが必要なのです。

 ネットの普及期にすでに大人だった人々と、幼時からネットに親しんでいる人々では、ネット上での言語生活も異なります。上の世代が「…」という記号を文の区切りの意味で使っているのを、若い世代は言いよどみと解釈し、深読みしてしまうそうです。ネットのことばにも世代間ギャップがあります。

 私自身はいまだに、ネットのことばも従来の書きことばの一種だという考えが抜けず、SNSでもきちっとした文を書きます。でも、これは認識不足かもしれません。人々はネット上で、文字を使いつつも、限りなく会話に近いコミュニケーションができるよう、工夫を重ねてきました。私たちは新しい言語の誕生に立ち会っているのです。千葉敏生訳。

読売新聞
2021年12月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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