オンラインで話しやすさを生みだす「聞き方」のルール

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人は聞き方が9割

『人は聞き方が9割』

著者
永松茂久 [著]
出版社
すばる舎
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784799110089
発売日
2021/12/09
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

オンラインで話しやすさを生みだす「聞き方」のルール

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

人は聞き方が9割』(永松茂久 著、すばる舎)は、2019年にベストセラーとなった『人は話し方が9割』の著者による最新刊。タイトルからわかるとおり、今回のテーマは“聞き方”。「話し方が9割なのに、聞き方も9割なの?」と疑問に思われるかもしれませんが、そこには理由があるようです。

それは「人は本来話したい生き物である」ということです。

本当は「話し上手な人」よりも「話させ上手な人」を求めているのです。

ということは、会話を上達させる一番のコツは、「苦手な話し方を磨くことや、苦手な人との会話に使う時間を減らし、自分の大切な人の話を聞く時間を増やすこと」 ただこれだけです。(「[はじめに]話なんか苦手なままでいい」より)

つまり会話上手な人は、こうしたことを心得ているに過ぎないということ。

とくに難しいことをやっているわけではなく、とにかく話をしっかり聞く。聞くことを通じ、相手をきちんと理解し、相手の求めていることを投げ返しているだけだというわけです。

そう信じて疑わないからこそ、「話し方と聞き方ではどちらが大切なのか?」と聞かれるたび、著者は迷わず「コミュニケーションにおいては、話し方より聞き方のほうが大切」だと断言しているのだとか。

したがって本書は、『人は話し方が9割』のさらに大切な部分をまとめたものだということです。

きょうはそんな本書の第4章「『また会いたい』と思われる人の聞き方」のなかから、“オンラインでの聞き方”についてのトピックスを取り上げてみたいと思います。

オンラインは聞き方ですべてが決まる

講演やセミナーなどの勉強会、あるいは会社の会議などは、“ひとりの発言者対聴衆”という図式のもとに成り立っています。そういう場合、発言者はプロもしくは慣れている人である場合が多いため、さほどの問題はなかったはず。また、聞く側が他の人に表情を見せる必要もほぼなかったのではないでしょうか?

しかし、オンラインの場合はそうはいきません。多くの場合は全員の顔が表示される画面設定になっているので、聞いている人の表情が参加者全員に見られてしまうことになるからです。

そのため、「この人は真剣に聞いているな」「この人は話の聞き方が下手だな」というような印象が、即座についてしまうわけです。

つまりオンラインの浸透によって、「自分自身がどんな顔をして聞いているのか」を無視できない状況になったということ。いいかえれば、「聞く力」がダイレクトに問われるようになったと考えることができそうです。(188ページより)

オンラインでいい空気をつくる「3つのコツ」

慣れないなかで話す人にとって、オンラインにおける周囲からのリアクションは命綱のようなもの。懸命に話した結果、リアクションがなかったとしたら、発言者は嫌な気分になるかもしれません。

逆にうなずいてくれる人がいたとしたら、それが安心感につながる可能性もあります。

そんなオンラインの性質を考慮し、著者は社内会議やコミュニティのなかでいくつかのルール決めをしているのだそうです。

それは

「否定禁止」

「魔法の傾聴」

「リアクション3倍」

というものです。

(195〜196ページより)

つまり、話す人に対する配慮をあらかじめルール化しているということ。先にルール化しておけば、「あ、ここはそういう場所なんだな」と、参加者にマインドセットしてもらえるからです。

「否定禁止」とは、いうまでもなく相手のことばを否定しないこと。逆に「いいですね!」「おもしろいですね!」「いいアイデアですね!」というように、肯定に徹するのです。

「魔法の傾聴」は、表情、うなずき、姿勢、笑い、感動などをフルに活用して聞くこと。そして「うわぁ、それは素敵ですね!」というように前向きなリアクションをするわけです。

そのリアクションに関しては「リアクション3倍」も重要なポイント。リアクションが大きければ大きいほど、画面の向こう側にいる参加者たちに伝わりやすく、好印象を与えることができるのです。(194ページより)

リアルと同じマインドでオンラインに向かおう

なお著者の場合、「僕はコミュニケーションが苦手なので顔出しはナシでいいですか?」「お化粧をしていないので顔出しNGでお願いします」というような方には、オンタイム参加を丁寧にお断りし、録画で見てもらっているのだそうです。

それは、しっかりと準備をして臨んでいる方にとっての話しやすさを守るため。オンラインでもリアル同様、参加する人が話しやすい空気づくりに協力することが最低限のマナーだということです。

オンラインは移動がないぶん楽なツールではありますが、その反面、おそろしいほど聞き方や心の姿勢をジャッジされます。

「この人は感じのいい人だな」 「あ、この人はどこにいっても好かれないだろうな」 と判断されてしまうのです。

こうした理由から見ても、オンラインはコミュニケーション、特に聞く力や姿勢、その人自身の周りに対する配慮や心の在り方が大きく問われるツールなのです。(197〜198ページより)

ストレスなくオンライン時代を進んでいくためには、そういう意味でも聞き方を磨くことが大切なのだと著者は主張しているのです。(196ページより)

本当は話なんか苦手でもいい。解決しようとしたり、無理にいい話をする必要などなく、本当に大切なのはただ相手に寄り添うこと。そういう意味で、相手の話をしっかりと聞くことは重要なのだと著者は主張しています。たしかにその点を意識していれば、コミュニケーションの質はおのずと高まっていくのではないでしょうか?

Source: すばる舎

メディアジーン lifehacker
2021年12月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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