『わたしたちはみな弱法師である』
- 著者
- 千葉万美子 [著]
- 出版社
- 盛岡出版コミュニティー
- ISBN
- 9784904870495
- 発売日
- 2021/06/01
- 価格
- 1,210円(税込)
<東北の本棚>優雅な能楽の魅力紹介
[レビュアー] 河北新報
能楽の魅力を紹介する随筆集。著者は喜多流能の愛好家でつくる「一関喜桜会」(一関市)の会長で、岩手日報などに1997~2020年に掲載された77編をまとめている。
表題にも使う「弱法師」は能の演目。同名の1編では父に家を追われ、盲目となったシテ(主人公)の少年を取り上げる。少年の悟りの言葉「満目青山は心にあり」と演者の表現方法について考察。15歳で失明した自身の兄とも重ね合わせる。
天人の優雅な舞が見どころの「羽衣」が、本書の折々に登場する。著者が結婚式や祝賀会などさまざまな祝いの席で舞い、謡った演目という。「羽衣は何でできているか」と題した随筆では「立派な天人像を作者は要求している」と指摘。羽衣を心ある者だけに時折見える「美しい自然の象徴」と解釈した。
東日本大震災からの復興への祈りを込めた復曲能「名取ノ老女」鑑賞の感想もある。「被災者にとって鎮魂と祈りは欠かせない」とし、「非常に現代的な演劇と感じた」とつづる。
能の関連用語や演目の粗筋の注釈を付け、舞台のカラー写真も多用している。能楽になじみのない読者も読みやすい。(和)
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盛岡出版コミュニティー019(601)2212=1650円。