受け身タイプの若手を効果的に伸ばす「アウト・イン・アウトの法則」

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ロジカルティーチング ガツガツしていない若手社員を伸ばす技術

『ロジカルティーチング ガツガツしていない若手社員を伸ばす技術』

著者
阿部淳一郎 [著]
出版社
ぱる出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784827213157
発売日
2021/12/07
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

受け身タイプの若手を効果的に伸ばす「アウト・イン・アウトの法則」

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「イマドキのガツガツしていない若者たち」をどうやってうまく育てるかを、精神論や一個人の経験談ではなく、「ロジカルなアプローチ」でお伝えすることが、本書のテーマです。(「はじめに」より)

ロジカルティーチング ガツガツしていない若手社員を伸ばす技術』(阿部淳一郎 著、ぱる出版)の著者は、本書についてこう説明しています。

もちろん個性も能力も背景もそれぞれ異なるのですから、「イマドキの若者」とひとくくりにはできないかもしれません。しかし、大まかな傾向値と再現性のある方法論をいくつか知っておけば、悩んだときの判断材料にはなるのではないかという考え方。

ちなみに若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタントである著者は、大学の就職支援の現場において、「前のめりで上昇志向が強い学生が減り、受け身タイプが増えた」と感じているそう。

とはいえ「甘い!」「意識が低い!」と感じているわけではなく、彼ら・彼女らが生きているカルチャーを考えると、「働く」ということに対して受け身になる人が多くなるのも当然ではないかと感じているというのです。

だからこそ、「いまの時代に合わせた効果的な育て方のアプローチ」が必要なのだと。

つまり本書では、そのためのノウハウを明かしているわけです。きょうは第6章「『イマイチ伝わらない』から脱却する教え方・褒め方」に焦点を当て、「アウト・イン・アウトの法則」をご紹介したいと思います。

相手のアウトプットが変わったか否かを見極める(学習者検証の法則)

初めての人に教える際のフォーマットとして効果的なのが「アウト・イン・アウトの法則」なのだそうです。その流れは以下のとおり。

アウト・イン・アウトの法則

① はじめにやらせる・答えさせることで相手の現状を確認する→アウト

② 相手の現場に合わせた情報を提供する→イン

③ 最後にやらせる・答えさせることで習熟度を確認する→アウト

(139ページより)

まずは前提。仮に、ある教員が授業でAという難解な問題に対する解説を一方的に伝えたとします。ところが生徒全員はまったく理解できず、問題を解けませんでした。そのことを教員は、「きちんと教えたのに、理解できないとはなにごとだ!」と怒りました。

しかし当然ながら、これは効果的な教え方とはいえないはず。そもそも、「きちんと教えた」とはどういう状態のことをいうのでしょうか?

このことを説明するにあたって、著者は教育学の「学習者検証の法則」という概念を引き合いに出しています。「教えたと完了形にできるかどうかは、『相手のアウトプットによい変化が起きたか否か』によって判断される」という考え方。

つまり、この原則に即した考えた場合、「私は自分なりにきちんと教えたと自負している」というような主観的な自己評価では「教えた」という完了形にはならないわけです。上記のケースでいえば、「Aという問題を生徒たちが解けるようになったかどうか」で判断する必要があるということ。

ところがこの例では、生徒はひとりも解けるようになっていません。したがって、教員がいくら「自分はきちんと教えた」と強調しようと、「きちんと教えた」ことにはならないわけです。生徒たちが問題を解けるようになって初めて、「きちんと教えた」という状態になるのですから。

これを仕事にスライドさせて考えてみると、「上司・先輩である自分がきちんと教えたと自負しているかどうか」ではなく、「相手ができる・わかるようになった」という視座が必要になるはず。つまり、それがアウト・イン・アウトの法則だということ。

相手に最適な情報を伝えるには、まず相手の状況を確認する必要があります。そこで「①やらせる、もしくは答えさせる(=アウト)ことで、相手の現状の理解度・習熟度を確認する」ことから始めるのです。(138ページより)

相手の「わかりました」を鵜呑みにしない(アウト・イン・アウトの法則)

ただ「知っている」とか「できる」という答えが相手から返ってきた場合は注意が必要。

なぜなら、「実は、あまりよくわかっていない(もしくは、やったことがない)けれど、とりあえず話の流れで『知っている・できる』といってしまう」ことが往々にしてあるから。

そこで、もし「YES」という答えが返ってきた場合は、「どういうものか具体的に説明してみて」「じゃあ、実際に少しやってみて」というように、具体的に答える、もしくは手を動かすことを通じて、本当の理解度を確認するべき。

そして、それを踏まえ、次に「②相手の状況に合わせた情報を提供する(イン)」ことをします。まったく知らなければ「ゼロからていねいに」、経験者であれば「ざっくりと」といった形でアレンジをかけるのです。

著者によれば、大切なのはそのあと。「相手のアウトプットによい変化が起きたか否かによって検証される」ので、到達度合いの確認が必要。そこで、最後に必ず「③最後にやらせる・答えさせることで習熟度を確認する(アウト)」必要があるわけです。

たとえば、このような感じです。

一気に説明しましたが、大丈夫ですか? 分からないところはありますか?

(大丈夫です)

では、私は横で見ているので、一度つくってみましょう。

(142ページより)

このとき、「大丈夫? わかった?」「はい、わかりました」というような「相手のYES」を鵜呑みにせず、「わかったなら、具体的に説明してみて」「実際にやってみて」というように、「答えさせる・やらせる」ことが大切。もしもわかっていない・できていない部分があれば、その部分を追加で指導する必要があるということです。(141ページより)

組織において、エースや4番バッターを育てることは大切。とはいえ、全員がその資質を持っているわけではありません。だからこそ、「普通の人を普通に戦力化すること」が重要なのだと著者はいいます。若手社員を抱えるリーダーや経営者は、そうした思いをもとに書かれた本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2021年12月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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