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[レビュアー] 新潮社
柴那典『平成のヒット曲』(新潮新書)は、美空ひばりから米津玄師まで、平成の30年間を彩った名曲の数々を、社会事件や世相の変化を背景としながら丹念にひもといていく。まさに歌は世につれ、世は歌につれ、人心の移り変わりを鮮やかにとらえた時代批評だ。
エマニュエル・トッド『老人支配国家 日本の危機』(文春新書)は、少子高齢化から、核武装、家族や天皇まで、日本国家の危機の構造に大胆に斬りこむ。歴史人口学者で家族人類学者らしい論点が興味深い。
芝健介『ヒトラー』(岩波新書)は、ナチス研究の第一人者が、最新の資料をまじえて、歴史的事実の中で独裁者ヒトラーの全生涯をとらえ直す力作だ。
堤未果『デジタル・ファシズム』(NHK出版新書)は、米中のテックジャイアントが、それと知られぬ間に他国の富や社会を掌握していくさまを鋭く分析。コロナ禍で急速に進むデジタル化の渦中で、旧来とは様相の違う、情報化時代のファシズムにため息が出る。
養老孟司『ヒトの壁』(新潮新書)は認識、解釈や予測など、人が生物学的ヒトであるがゆえにのがれ難い、様々な壁について考察。死線をさまよった心筋梗塞の体験、長年の相棒だった飼い猫まるとの死別など、コロナ禍の2年間、84歳の知性が考え抜いた人間哲学だ。