『異言語間コミュニケーションの方法 媒介言語をめぐる議論と実際』木村護郎クリストフ著(大修館書店)

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異言語間コミュニケーションの方法

『異言語間コミュニケーションの方法』

著者
木村護郎クリストフ [著]
出版社
大修館書店
ジャンル
語学/語学総記
ISBN
9784469213850
発売日
2021/08/23
価格
2,860円(税込)

書籍情報:openBD

『異言語間コミュニケーションの方法 媒介言語をめぐる議論と実際』木村護郎クリストフ著(大修館書店)

[レビュアー] 飯間浩明(国語辞典編纂者)

意思疎通の多様な手段

 日本人は学校で何年間も英語を学びます。読み書きだけではダメで、最近は会話にも力を入れています。私もこの欄で、効果的な英語学習法について何度か取り上げました。

 英語を母語とする人々は、生まれながらにして世界標準語の話し手です。一方、英語圏に生まれなかった人々は、並々ならぬ苦労をして、ネイティブに理解される英語を習得しようとします。何だか不公平な気もします。

 このように、一方だけに負担がかかるコミュニケーションを、著者は「非対称」と表現します。こうした非対称なありかた以外に、異言語間のコミュニケーションの形はきわめて多様であることが、本書で示されます。

 著者が実地に調査したのは、ヨーロッパの国境地域の言語です。川を挟んで向かい合うドイツ東部のフランクフルトとポーランド西部のスウビツェは、歴史的な結びつきが深く、住民が行き来し、会話を交わしています。

 ドイツ人とポーランド人が話す場合、ポーランド人がドイツ語を使うことが多いようです。ドイツ語のほうが有力な言語だからです。この場合は非対称な関係になります。

 でも、それだけではありません。場合によって、ドイツ人が慣れないポーランド語を、ポーランド人がドイツ語をというように、互いに相手の言語を使うこともあります。奇妙ですが、これで意思疎通ができるんですね。

 ドイツ人がドイツ語で、ポーランド人がポーランド語で会話し、十分に通じることもあります。相手の言うことを一定程度理解しつつ、自分は母語を使って自由に表現する。これなら、語学学習の負担は少なくてすみそうです。

 語学学習の目標は、ネイティブそっくりに読み書きや会話ができること、と考えがちです。でも、異言語を話す人々と意思疎通する方法はいろいろです。翻訳機なども利用し、「伝わればOK」と楽に構えてもいいのでしょう。

読売新聞
2021年12月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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