『国造 大和政権と地方豪族』篠川賢著(中公新書)

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国造―大和政権と地方豪族

『国造―大和政権と地方豪族』

著者
篠川 賢 [著]
出版社
中央公論新社
ジャンル
歴史・地理/日本歴史
ISBN
9784121026736
発売日
2021/11/18
価格
946円(税込)

書籍情報:openBD

『国造 大和政権と地方豪族』篠川賢著(中公新書)

[レビュアー] 佐藤信(古代史学者・東京大名誉教授)

 古代の律令制では地方諸国には中央から国司が派遣され、地方豪族が任じられる郡司たちを統括したが、本書はその前提となった大和政権が地方豪族を国造(くにのみやつこ)に任じた国造制に焦点をあてる。律令国家が中央集権的な地方支配を実現する過程を知るうえで、国造制の理解は重要なカギとなる。

 国造の史料を網羅的に吟味し、その構造・機能を、成立から廃止までにわたり全体的かつ具体的にとらえる。国造制が大和政権の屯倉(みやけ)制・部民制などとどう関係したかや、国造制の変遷を大化改新や律令制定などの歴史過程のなかに総合的に位置づけている。

 ただし、国造をめぐる諸史料の解釈には、多くの説がある。個々の史料が語る国造のあり方を確定して統一的な国造像を構成する努力が必要であり、本書の叙述形式や新書に珍しい注が付されることにもうかがえる。考証の手続きは迂遠(うえん)に感じられるかもしれないが、『日本書紀』を史料批判して事実を確定し自説を展開する誠実な態度が、説得力を裏付けている。

 本書がこれからの国造研究の新たな出発点となることは、間違いないだろう。

読売新聞
2021年12月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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