諸田玲子の人気歴史シリーズ最新刊『きりきり舞いのさようなら』 刊行記念エッセイ

エッセイ

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きりきり舞いのさようなら

『きりきり舞いのさようなら』

著者
諸田玲子 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334914400
発売日
2021/12/22
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

諸田玲子の人気歴史シリーズ最新刊『きりきり舞いのさようなら』 刊行記念エッセイ

[レビュアー] 諸田玲子(作家)

此の世をばどりゃお暇せん香の 煙と共にはい左様なら

 これは江戸の戯作者、十返舎一九の辞世の句とされています。真偽はともあれ、弥次さん喜多さんの滑稽な道中記『東海道中膝栗毛』で絶大な人気を博した一九にはまさにぴったりの辞世。でも実際の一九は大酒飲みの女好き、宵越しの銭は持たずいつも借金取りに追われ、お調子者かと思えばむっつり無口の短気者……と、つかみどころのない人物です。

 といっても、本書に登場する葛飾北斎やその娘のお栄も人後に落ちない変人ですから、一九の娘の舞が日々〈きりきり舞い〉をさせられるのもやむをえません。

 そんなにぎやかな一九一家にふりかかる騒動の数々を笑いと涙で描いたのが「きりきり舞い」シリーズです。第一作目は〈一九にまつわる謎〉、第二作目は〈舞の恋の行方〉、第三作目は〈東海道珍道中〉ときて、本作は江戸の大火から灰さようならまでのオハナシ。中身は読んでいただくとして、今回も、老婆とお狐様、火事とお化けと盗賊に、舞はとことん翻弄されます。

 火事と喧嘩は江戸の華―といわれるように、江戸は数えきれないほどの火事で多大な被害を受けてきました。十万を超える焼死者を出した明暦の大火をはじめ、明和、文化の三大大火につづくこの文政の大火も、神田佐久間町から燃え上がった火は北西風にあおられて江戸の町々へ延焼、三十七万の家屋が焼失、三千近い焼死者を出しました。

 それでも、悲惨な災害を乗り越えて、江戸庶民はたくましく明日へ向かって歩き出します。もちろん舞や舞の家族も負けてはいません。老病に苦しむ晩年の一九でさえ、一念発起して、人々をあっと驚かす大博打をしてのけます。

 さあ、それはなんでしょう?

 大団円を迎える本作で大いに笑って、皆さんもコロナ禍の憂さを吹き飛ばして下さい。

光文社 小説宝石
2022年1・2月合併号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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