『メルケル 世界一の宰相』カティ・マートン著、倉田幸信・森嶋マリ訳

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『メルケル 世界一の宰相』カティ・マートン著、倉田幸信・森嶋マリ訳

[レビュアー] 産経新聞社

16年に及ぶ長期政権を維持して先日引退したドイツのメルケル前首相。自分を語らず情報の少ない彼女について時宜を得た評伝だ。

特筆されるのが東独育ちの科学者という生い立ち。それが35歳での政界デビュー後、理想や本心を秘めつつも現実に応じて振る舞う「控えめながら進歩的」なスタイルに結実する。プーチン露大統領らやっかいな相手とも忍耐強く渡り合い、ユーロ危機を経てドイツを欧州の盟主に押し上げた。

著者は東欧出身の米女性ジャーナリスト。対中政策など業績の評価はまだ定まっていないが、同時代人特有の生の情報と熱い共感が詰まる。(文芸春秋・2475円)

産経新聞
2021年12月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

産経新聞社

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