「日本の米の酒はこの国に住む人々の手によって造りあげられた『民族の酒』である」。そう力強く述べる著者は、造り酒屋に生まれた発酵学の第一人者。数千年にわたる技術的発展から、飲まれる機会や商業流通の変化、醸造設備や酒器まで、日本酒に関わる話題を網羅的に盛り込む。
特に日本酒の起源について、他のアジアの麹酒とは異なる麹カビを使う点から、日本列島で独自に生まれ発展した酒と推測しているのは興味深い。
平成4年の原著刊行時と比べ、今の日本酒の酒質は大幅に改良されたという。晩酌が楽しくなる一冊。(小泉武夫著、講談社学術文庫・1100円)
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2021年12月26日 掲載
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