人名に歴史あり 変わらぬものは親心

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カラー新版 人名の世界地図

『カラー新版 人名の世界地図』

著者
21世紀研究会 [著]
出版社
文藝春秋
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784166613403
発売日
2021/11/18
価格
1,595円(税込)

書籍情報:openBD

人名に歴史あり 変わらぬものは親心

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 子供の名付けは時代を反映するとよく言われる。戦時中は「勝」「武」「国」といった文字が流行ったが、近年は「蓮」「葵」「菜」など植物に関する字が人気のようだ。「汰」「莉」「嵩」など、よく用いられる漢字に部首を加えて、ひとひねりしたような字の使用も。どこかで個性を表現したい気持ちの表れだろうか。

 では諸外国の事情はどうか。『カラー新版 人名の世界地図』(21世紀研究会編)は、名前の歴史についての情報が詰まった、楽しい一冊だ。

 人名はその国や地域の歴史や文化と密接に関連している。洗礼者ヨハネの名は、英語でジョンやジャック、ジェーン、フランスではジャン、スペインでフアン、イタリアでジョバンニ、ロシアでイワンなど様々に変化した。ジョンソンやジョーンズなどの姓の源流にもなっており、一人の聖人の名がいかに広く影響を与えたかわかる。中国では世代ごとに決まった漢字や部首を用いる家系があり、名前を見るだけで何世代目かわかるといったことを知っておけば、雑談のネタにもなるだろう。また、文革期にはいかついイメージの字が流行ったが、最近は女性だと「莉」や「茜」などの字が好まれるというから、日本の状況と似た部分もありそうだ。

 時代や文化背景がいくら変わっても一貫して変わらないのは、名前には親が子供の幸せを願う気持ちが込められているという点だろう。本書を読めば、そのことがよく伝わってくる。

新潮社 週刊新潮
2022年1月13日迎春増大号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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