『宮脇俊三の紀行文学を読む』小牟田哲彦著
[レビュアー] 産経新聞社
「鉄道紀行文学」の分野を確立した宮脇俊三の作品の魅力を朗読と解説だけで伝えたNHKラジオ番組を書籍化。国鉄(現JR)全線を乗り終えるまでの体験をつづったデビュー作『時刻表2万キロ』や戒厳令下の旅行記『台湾鉄路千公里』、直木賞候補作にもなった生涯唯一の小説集『殺意の風景』など12作品を紹介している。
宮脇は紀行文への写真掲載を善しとせず、徹底的な推敲(すいこう)で「言葉だけで読者が旅の情景を思い浮かべることができる上質の紀行文」にこだわった。その味わいを、自身もJR全線完乗を達成した著者が伝える。地図とともに楽しめる。(中央公論新社・2420円)