漫画誌「ガロ」の黄金期を代表する漫画家の一人である著者の文庫傑作集。BS番組「吉田類の酒場放浪記」でおなじみの酒場詩人が編者を務めた。
戦争の傷跡が色濃く残る街の場末や路地裏、田舎町を舞台にした12作を収録。昭和20年代に東京の下町で育った著者が、無頼漢や風来坊が苦しみを抱えながら生きる姿を実感を込めて描いている。最近の漫画では味わえない、土ぼこりの匂いがするようだ。不思議な余韻が残り、しみじみとした気持ちになった夜に読み返したくなる。釣りをテーマにした作品群も趣深い。(つげ忠男著、吉田類編、ちくま文庫・990円)

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2022年1月9日 掲載
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