『ディープフェイク』
書籍情報:openBD
『ディープフェイク』福田和代著(PHP研究所)
[レビュアー] 宮部みゆき(作家)
ネットでUFOや未確認動物を撮った! というふれこみの動画を観(み)るのが好きだ。もちろん、どれもみんな合成・加工された映像だと承知の上で。
ほとんどの場合はこのような娯楽方面に使われる優れた映像加工技術が、特定の個人を貶(おとし)め、社会的に破滅させるために繰り出されたらどうなるか? それが本書のメインストーリーだ。著者の福田さんは現代エンタテイメント小説界きっての豪腕の持ち主。今回はいつものリアルで強固なプロット構成に、誰にも信じてもらえず、誰も信じられないというホラー風味が添えられている。
主人公はメディアの人気者でもある学校教師。ある日突然、週刊誌で一人の女生徒との不適切な関係を書き立てられ、さらには学校内で生徒に暴力をふるっている動画がウェブ上にさらされる。主人公は全く身に覚えがない。全てはフェイク、でっち上げなのに、偽の事実はどんどん彼を追い詰めていく。中盤までは息苦しくなるほど主人公に過酷な展開ですが、フェイクの深淵(しんえん)から真相も犯人もちゃんと掴(つか)み出されるので、安心して怖がりましょう。