『時代小説の戦後史』
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『時代小説の戦後史 柴田錬三郎から隆慶一郎まで』縄田一男著
[レビュアー] 産経新聞社
若い読者には地平線上の存在かもしれない。「眠狂四郎」の柴田錬三郎、「柳生武芸帳」の五味康祐、「魔界転生」の山田風太郎、「影武者徳川家康」の隆慶一郎。
いずれも戦争体験を持ち、鬼籍に入った作家である。既成を破る鋭角的な時代小説により、戦後の文壇で一世を風靡(ふうび)した面々だ。読者の心をつかんだ主人公たちには各作者のいかなる体験がどのような形で吹き込まれているのだろうか。文芸評論家の著者が独自の取材も交えつつ論考を深めていく。その営みは時代と絡み合う作家の精神の腑分けを思わせる。渾身(こんしん)の力作であることは間違いない。(新潮選書・1650円)