『文豪と印影』西川清史著(左右社)

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文豪と印影

『文豪と印影』

著者
西川清史 [著]
出版社
左右社
ISBN
9784865280623
発売日
2022/01/05
価格
2,420円(税込)

書籍情報:openBD

『文豪と印影』西川清史著(左右社)

[レビュアー] 鵜飼哲夫(読売新聞編集委員)

 昭和40年代頃まで、著者名や出版社などを記した本の奥付には著者のハンコが捺(お)されていた。発行部数に見合った印税(著作権使用料)を著者に支払うためだ。作者は一冊一冊に検印しながら収入を計算した。

 無頼派の作家、太宰治の場合、検印は妻、美知子の仕事。『斜陽』などで戦後、流行作家になると作業はひと苦労。しかも収入は、太宰が闇で購入する酒代、煙草(たばこ)代に消えたと『回想の太宰治』に書いている。

 本書は、作家の印影セレクション。耽美(たんび)派、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃(いんえいらいさん)』の印はこれぞ芸術品であり、『少年愛の美学』の鬼才、稲垣足穂は奇天烈(きてれつ)、『竜馬がゆく』の司馬遼太郎は時代を駆け抜ける作風そのままだ。

 これに対し、「おしゃれ童子」の作もあり、自意識がいっぱいの太宰は三文判ではないか!? 文は人なり。印影は、必ずしも人ならず。

読売新聞
2022年1月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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