『人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか』山崎史郎著(日本経済新聞出版本部)

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人口戦略法案

『人口戦略法案』

著者
山崎 史郎 [著]
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784532177102
発売日
2021/11/29
価格
2,640円(税込)

書籍情報:openBD

『人口戦略法案 人口減少を止める方策はあるのか』山崎史郎著(日本経済新聞出版本部)

[レビュアー] 佐藤義雄(住友生命保険特別顧問)

少子化 国民的議論の時

 日本の人口が減少していくことは国民の共通認識であろう。だがそのスピード、規模についてはっきりした認識を持つ人は少ないのではないか。政府機関の中位推計では2030年代は毎年80万人が減少し、53年に人口は1億を割り、2110年には5300万人台となる。

 そうなっても1人あたりでは豊かさは変わらないと考えたり移民を入れればよいと思ったりする人もいるだろう。だが消費と投資の減少による経済の「縮小スパイラル」や、各国が既に経験しているように移民受け入れが持つ負の側面を考えると、問題を深刻に受け止めるべきだろう。作中の人口学者は、今の状況が続けば日本は長期にわたって超高齢社会となり「経済や社会保障の面で厳しい状況に入っていくことは間違いない」と説く。

 著者は元厚生労働省の幹部で長年社会保障を中心とした政策立案や実現に携わり、また早くから少子高齢化の問題点を提起し総合的対策が必要と警鐘を鳴らしてきた人物。本書は少子化の問題点をほぼ網羅的に論じその解決策や制度創設を提言している。問題の大きさと解決策の難しさを再認識させてくれるに十分だ。

 まずここまで少子化が進むと今からただちに解決策を打ち出しても人口減に歯止めがかかり回復するには長い期間を要する。また取り組むべき改革が多岐にわたり相当な力業を要することが容易に想像される。さらに結婚・出産はあくまで個人の問題であり、この問題に国が介入すべきではないという批判も予想される。だからこそ著者は一刻も早く国民的議論が必要と力説する。一方で人口減少は大きな問題であると考えている国民が圧倒的多数であり、打ち出し方をしっかりと練り上げれば国民の大きな関心を呼ぶだろうとの確信も示されている。諸外国の制度改正や取り組みも多く紹介されており今後の議論の参考になる。

 論文形式でなく小説形式にしたのは複雑で多面的な話も多く論文だと読みづらいからだと著者は言う。できるだけ多くの人がこの問題に関心を寄せ理解してほしいという著者の切なる思いが伝わる。

読売新聞
2022年1月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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