信頼、恥、後悔……感情を認知して意思決定をコントロール

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感情は、すぐに脳をジャックする

『感情は、すぐに脳をジャックする』

著者
佐渡島庸平 [著]/石川善樹 [著]/羽賀翔一 [イラスト]
出版社
学研プラス
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784054068438
発売日
2021/12/16
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

信頼、恥、後悔……感情を認知して意思決定をコントロール

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

〈自分の感情を細かく認知できるようになると、あらゆるアウトプットが確実に変わります〉

 そう記すのは、漫画誌の編集者として『バガボンド』『ドラゴン桜』『宇宙兄弟』などのヒット作を手がけた後、クリエイターのエージェント会社を起業した佐渡島庸平氏。

 彼にとっての「感情」は、作品に描かれるものにすぎなかったが、独立してみて、自分の行動や意思決定がさまざまな感情に左右されていることに気づき、正しく理解する必要性を感じたのだという。

 タイトルは、共著者で友人でもある予防医学研究者、石川善樹氏の言葉から。ほんとにその通り。感情はコントロール不能。気分が乗らないで仕事をミスったり、嫌悪感で関係性を悪くしたり、評者も失敗をいくつも重ねてきたっけ。

 すぐに脳を乗っ取ってしまう感情とうまくつきあうには、認知の解像度を上げることが必要だという。まずはどんな感情があるのか把握することから。「喜怒哀楽」の4つ程度ではざっくりしすぎ。米国の心理学者が提唱した「感情の輪」が紹介されている。8つの基本感情の組み合わせによって、信頼、恥、後悔……といった50種類近い感情が図上に配置される。言われてみれば確かにそういうのもあるある、と納得。

『漫画 君たちはどう生きるか』で知られる羽賀翔一氏は作画を担当するだけでなく、佐渡島氏の会社に所属する漫画家として後半の鼎談にも参加している。著者の言動を身近で見聞きしているので、その対話は「感情の認知」がどのようにビジネスシーンに生かされるのか、実践についての報告にもなっている。

 印象的だったのは、感情をより緻密に把握できるようになるには「退屈な時間を過ごすことだ」というアドバイス。ほどほどの手軽な刺激で時間を埋め尽くせてしまう時代。退屈は、意識しなくては手に入らないものになってしまっている。

新潮社 週刊新潮
2022年2月3日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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