『AI×データ時代の「教育」戦略』
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<東北の本棚>新しい生活の学習考察
[レビュアー] 河北新報
店先で人型ロボットが買い物客に話し掛けたり、囲碁のトップ棋士がコンピューターに負けたりする現代。人工知能(AI)がどんどん進化し、ビッグデータのビジネス活用が進められつつある世界で、教育はどう在るべきなのか。東北大大学院教育学研究科教授の著者が五つの戦略を示す。
戦略ごとに章立てされており、「戦略I」は新型コロナウイルスの感染拡大によって広まったオンライン教育を考察する。米カリフォルニア州サンノゼ州立大の学生はコロナ禍前から、講義前にインターネットを介してオンデマンド授業を聴いておかなければならず、学内での実際の講義はオンデマンド授業の理解を深める練習問題などに費やされる。教員は従来型の一斉講義をほとんど行わず、つまずいている学生にヒントを与えるなどしているという。
著者は「教師の役割が大きく変わると同時に、大学は教員数を減らすことができる。急速な少子化に対応しなければならない多くの教育機関にとって、一つの有効な選択肢になる」と喝破。コロナ禍で急速に普及したオンライン教育は定着するとみる。
著者はさらに、コロナ禍で新しい生活スタイルの議論が始まっているとし、教育は集団学習から個人学習に移行すると予想。オンラインによって場所や時間に縛られず、じっくり学べるようになると強調する。
重い障害で小児病棟に入院する女子小学生があいさつすると、AI教師はデジタル教科書をiPad(アイパッド)に表示させた。受け持ち児童は女子小学生だけでなく米国や中国にもいて、ネットでつながる。優秀な翻訳機能を併せ持つ教師は、言葉の壁なく指名していく-。
著者が最後に記した未来予想図が実現する日は、近いのかもしれない。(桜)
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大修館書店03(3868)2651=1760円。