『VACATION EIZIN SUZUKI 鈴木英人 大人の画集ぬりえ』
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【聞きたい。】鈴木英人さん『VACATIONEIZIN SUZUKI 鈴木英人 大人の画集ぬりえ』
[文] 黒沢綾子
■旅心を誘う「線」の世界
山下達郎のレコードジャケットや、かつて人気を博した雑誌「FMステーション」の表紙でおなじみのイラストレーター兼版画作家、鈴木英人さん。青い海、きらめくビーチ、憧れのスポーツカー…。華やかな「1980年代」を象徴する都会的サウンド「シティポップ」がここ数年、世界的に再評価されたこともあり、ビジュアル面で支えた〝英人ワールド〟にも注目が集まっている。
鮮やかな色彩ばかりでなく、その神髄は「線」にある。光と影のコントラストもすべて、微細な線が決める。この豊かな線の表現を、近年ブームの「大人のぬりえ」にしたらどうなるか―。出版社が白羽の矢を立てたのもうなずける。
「最初、話をいただいたときはびっくりしましたが、なるほど、これは面白そうだ、ありそうでなかった本だなと思いました。実際に完成した本を開くと、こんな画集の見せ方があるんだと感心しましたよ」
40年以上にわたる画業から「バケーション」をテーマに30点を厳選し、作品の線だけを抽出。読者は原画に忠実に色を塗るも良し、思うままに着色するも良し。「夢のマイアミ」「バハマ島での午後の休息」など、現地取材を基にした作品群は、ウィズコロナの時代にあって、見る者の旅心を強烈に刺激する。
実は制作当時、「色を塗る」作業はなかったらしい。まず黒い線で描き、「その線にそって、米パントン社の色付きフィルムを一つ一つ切り貼(は)りするというアナログな〝貼り絵〟なんです。今はデジタルで着色しますけどね」。
塗るにせよ、貼るにせよ、根気が必要なのは変わらない。最後に応援メッセージを。「塗り絵の列車に乗ったら、途中下車をしないで終点まで行きましょう!(笑)」(KADOKAWA・1870円)
黒沢綾子
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【プロフィル】鈴木英人
すずき・えいじん イラストレーター。昭和23年、福岡県生まれ。デザイナー、アートディレクターを経て55年にデビュー。60年にリトグラフの作品集「EAST ALBUM」を発表以降、版画作家としても精力的に制作を続けている。神奈川県逗子市在住。