『病んだ言葉 癒やす言葉 生きる言葉』
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『病んだ言葉 癒やす言葉 生きる言葉』阿部公彦著
[レビュアー] 産経新聞社
自分の思いを誰かに届けたくても、言葉で伝えるのはけっこう難しい。そんな言葉の持つ弱さと強さについて、英文学者が思索した31編の文章を収める。
高校での「論理国語」導入をめぐる議論に触れ、とかく見落とされがちな雑音まみれの言葉の豊かさを説く。一方で、英語と日本語表現の「空間感覚」の微妙な違いに、人間心理の面白さを見る。「弱く、不安定で、しばしば失敗し、ずれることの多い言葉の背後には、同じく弱く、不安定な人間の本性がある」。森鴎外や夏目漱石らの作品も俎上(そじょう)に載せ、言葉と人間の不思議な関係を浮かび上がらせる。(青土社・2200円)