『おネコさま御一行 れんげ荘物語』
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群ようこの世界 『おネコさま御一行 れんげ荘物語』刊行記念エッセイ
[レビュアー] 群ようこ(作家)
二〇二〇年の十月に、二十二歳七か月のネコを見送ってから、人と生き物との生活をあらためて考えるようになった。ペットショップやブリーダーのところに出向いて購入する人も多いかもしれないが、私の場合は、購入して同居するようになった生き物は、文鳥、十姉妹、セキセイインコ、カメくらいのものだった。お祭りの金魚すくいで持ってきた金魚もそのなかに入るかもしれない。
ネコは目の前に突然登場した。見捨てるわけにもいかず、御飯をあげたり寒さや暑さがしのげるようにしていたわけだが、実家は当時は集合住宅で、一階にはずらっと同じ形のベランダが並んでいたのに、どうしてうちを選んで入ってきたのだろうかと、不思議でならなかった。
そしてひとり暮らしをはじめて、マンションの敷地内に迷い込んできた子ネコを保護した。その子が二十二年以上、風邪ひとつひかずに元気で過ごし、そしてほとんどぽっくりと亡くなった後、人と人との縁もあるけれど、動物と人間との縁についても考えるようになった。
自分がネコやイヌになったことを想像すると、自分の何倍もの大きさの人間に対して、あんなにすり寄っていけるかどうかわからない。まず恐怖心がつのるのではないだろうか。言葉を勉強したわけでもないのに、人間の心情を理解しようとし、自分のやりたいことは主張しつつも、相手のことも思いやる。人間よりも動物のほうがずっと立派ではないかと思っている。
今回、れんげ荘周辺の人たちのところにも、新しい家族がやってきた。どれも突然、目の前に現れたイヌやネコたちである。それによって彼らの生活も変わっていった。キョウコのぶっちゃんへの想いもつのるばかり。見送ったネコとの生活を思い出し、「動物と一緒に暮らすのは楽しいし、ありがたいよねえ」と、ひとりごとをいいながら原稿を書いていた。楽しんでいただけるとうれしいです。