『なぜ私たちは友だちをつくるのか 進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係 Friends』ロビン・ダンバー著(青土社)

レビュー

1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

なぜ私たちは友だちをつくるのか

『なぜ私たちは友だちをつくるのか』

著者
ロビン・ダンバー [著]/吉嶺英美 [訳]
出版社
青土社
ジャンル
自然科学/自然科学総記
ISBN
9784791774272
発売日
2021/11/25
価格
3,080円(税込)

書籍情報:openBD

『なぜ私たちは友だちをつくるのか 進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係 Friends』ロビン・ダンバー著(青土社)

[レビュアー] 西成活裕(数理物理学者・東京大教授)

脳の大きさ 友人数限定

 ダンバー数というものをご存じだろうか。これは一人が持つ友達の数の上限を表していて、親族も含めるとおよそ150人になるそうだ。ただそんなに多くの友人はいないとか、SNSでの友達は1000人以上いる、などという人もいるだろう。そもそも友達の定義が曖昧なのに、どうすればこのような結論に到達できるのだろうか。数値自体には異論もあるようだが、提唱者本人が一般向けに語った本書は、その膨大なデータの提示と説得力で読む者を圧倒する。

 ロビン・ダンバーはイギリスの進化生物学者で、もともと霊長類の集団を研究していた。そこで集団のサイズが脳の大きさと関係していることを見出(みいだ)し、これは人の集団にも応用できるのではと着想したのだ。その後、人の大脳新皮質の大きさを調べ、また携帯電話の通話記録やSNSでの友人数など膨大なデータを分析し、この上限数を発見した。社会での複雑な人間関係を保つためには、相応に脳が発達する必要があるため、脳のサイズと友達の数が関係してくるというのだ。また人間関係を構築していくためには、相手と時間を共有する必要があり、その関係はかけた時間に比例して強くなるだろう。それ故にもしも友人数が多くなると、一人に割ける時間が減ってしまうため、関係の維持が難しくなる。こうした時間や脳の制約によって友達の数に上限が存在するのだ。

 その他、本書には男女の違いや友情、そして恋愛関係など興味深い話題が満載で、すべて科学的な視点から論じられているのも特徴である。また友人がいる事で免疫が活性化しやすくなり、それが長生きにつながることも示されている。しかし、今はコロナ禍でなかなか友達ができにくい。オンラインでは相手の身体性が感じられず、メールでは時間の共在性が無いため、オンライン環境では友達が出来にくいことが本書でも指摘されている。一刻も早いコロナの終息を願う。吉嶺英美訳。

読売新聞
2022年2月18日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

  • このエントリーをはてなブックマークに追加