沈没船の発掘・研究を行う考古学者の日常とは? 丸山ゴンザレスが聞いた、海に眠る船を調査するロマン

対談・鼎談

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沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う

『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』

著者
山舩 晃太郎 [著]
出版社
新潮社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784103541912
発売日
2021/07/15
価格
1,595円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

山舩晃太郎×丸山ゴンザレス・対談「ロマンは現場で待っている!」

[文] 新潮社


丸山ゴンザレスさん

中華料理が味方

丸山 僕は自分の人生をもう一回やるのは絶対無理だと思う。運やタイミングが重なって今があるのであって、振り返ってみると実はとても細い糸の上を歩いてきたんだな、と感じるんです。

山舩 私も、もう一度人生をやるなら、小学生の頃から野球じゃなくて水中考古学をやりたいと思いますね(笑)。野球部時代は、本当に辛かったです。

丸山 でも、「野球をやっていた」って言ったら、アメリカの大学院の研究室でクラブに勧誘されたりとかはなかったんですか?

山舩 全くなかったですね。でも発掘中は2ヶ月くらい研究室のメンバーと一緒に過ごすので、絆は強かったです。

丸山 僕が学生の時は島で発掘することが多かったので、みんなトランプか麻雀を覚えていきました。ほかに娯楽がないので……。発掘中はすごく仲良くなりますよね。あとは、行った先の国々では食にこだわったりします?

山舩 発掘中はこだわらないですね。大体、アパートを1棟丸ごと借りて、近くのレストランと契約してしまうんですよ。だからメニューも固定されます。私の場合、現地人ばかりの発掘チームの中に日本人一人、ということが多く、パン食が中心。とにかく米が食べたくなります。海外の大学にフォトグラメトリ(写真からの3次元測量)を教える講師として呼ばれた時には、夜は少し時間に余裕ができるので現地の中国人が経営している中華料理屋に行きます。世界中どこに行っても、絶対にあるんですよ。店員に「麻婆豆腐ありますか?」と聞くと、中国人向けの「隠れメニュー」を出してくれる(笑)。滞在中、毎日行くので覚えてもらえます。この前、2年ぶりにマルタの中華料理屋に行ったら「来たかー!」と歓迎されました。

丸山 僕もジャマイカに行った時に、現地の友人に「美味い中華屋がある」って言って連れていかれたんです。「そんなこと言ってもジャマイカレベルだろ」ってたかを括っていたら、本当にものすっごく美味い。なんでこんなに本場の味が再現できるんだ!と思ったら、ジャマイカには中華料理の調味料なんて売ってないから、ゼロから自分達で作っていると言っていました。そりゃ美味くなるに決まっている(笑)。逆に、海外の日本料理は、ギャンブルですね。南アフリカのケープタウンでは、「YouTubeで学んだ」って言う黒人の寿司職人がいたりしました。シャリがやたらデカくてカッチカチ。2貫で満腹でした。僕は基本的にそういう「貰い事故」をしに行きますね。

新潮社 波
2022年2月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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