『日本人のための議論と対話の教科書 : 「ベタ正義感」より「メタ正義感」で立ち向かえ』
- 著者
- 倉本, 圭造, 1978-
- 出版社
- ワニブックス (発売)
- ISBN
- 9784847061912
- 価格
- 990円(税込)
書籍情報:openBD
【聞きたい。】倉本圭造さん 『日本人のための議論と対話の教科書 「ベタ正義感」より「メタ正義感」で立ち向かえ』
[文] 磨井慎吾
■抵抗勢力には論破より敬意
ツイッターをはじめとするSNS(会員制交流サイト)上で、またリアル社会での政治や経済のさまざまな現場で、日々生じている議論という名の罵(ののし)り合い。強い言葉で「敵」を攻撃する言論は党派的な喝采こそ博するが、身内以外への訴求力は持たず相手の態度を硬化させるばかりで、結局は何も変えられない。
「相手側が、自分たちの大事にしているものを壊してくると思い込んでいるから、少しでも話を聞くと負け、ということになる」
そう語る著者は、中小企業を対象とする経営コンサルタントにして、日本の現実に即した「新しい経済思想」を模索する経済思想家。クライアント企業社員の平均年収を10年で150万円引き上げる大改革を成し遂げた経験もある。だが、それは国際標準の経営理論のような「正義」を掲げて社内の抵抗勢力を論破したからではない。まず改革に反対する現場派の古い社員たちに敬意を表した上で意見を聴き、相手側の「正義」の存在理由とそれが果たしてきた機能に配慮しつつ、細部を変えていくことで実現したという。
自分の正義感に基づいて敵を罵る前に、一段高い立場から相手側の存在理由を考える。「メタ正義感」と呼ばれるこの思考法は、相手側の存在意義を切り崩す代替案を考えることにつながり、不毛な党派対立を突破して最終的に自分の望む方向に状況を動かす力にもなる。これはさまざまな社会問題に応用可能で、多くの人が折り合える現実的な改善案に支持が集まれば、左右の極論や陰謀論は自然と力を失っていくと説く。
「両端の非妥協的な人はとりあえず放置しておけば過激化の末に影響力を失う。かつて連合赤軍が急進左翼への支持を失わせたように。左右の極を離れて真ん中に集まってきた人たちで、現実的な課題を一つ一つ解決していくしかないと思います」(ワニブックスPLUS新書・990円)
磨井慎吾
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【プロフィル】倉本圭造(くらもと・けいぞう) 経営コンサルタント。昭和53年、兵庫県生まれ。京都大経済学部卒業後、マッキンゼー入社。退職後ブラック企業や肉体労働現場でフィールドワークを重ね、船井総研を経て独立。