【気になる!】コミック 『のボルダ①』鬼頭莫宏著
[レビュアー] 産経新聞社
ボルダリングをテーマにした漫画。競技歴1年、23歳の会社員・藤子(とうこ)は仕事を終えるとすぐにジムへ向かう。壁の突起物をつかんだり足場にしたりして登る「単純なスポーツ」だが、藤子はそこに独特の奥深さと攻略性を見いだしたのだ。壁に設定された課題に悪戦苦闘しながらも、一手ずつ成長していく。
本書によると、選手は上達すればするほど視覚的、聴覚的に静かに登るのだという。確かにスポ魂的熱さは一切なく、スポーツ漫画でこれだけ静けさが漂う作品も珍しい。競技の本質を「客観的な自己否定」などと捉える言葉遣いも面白く、新鮮な読み応えだ。(新潮社・682円)