今川氏真は〝海道一の弓取り〟と称された戦国大名の義元の嫡男。名門・今川家を潰した愚将とみられてきた。しかし、後半生は文化人として乱世を生き延び、その子孫は幕臣として存続。近年は氏真の評価を見直す研究も進んでいる。
本書は、氏真の生涯を新たな視点で描いた歴史長編小説だ。本書に登場する氏真は文武に秀で、当代一の蹴鞠の名手として優美な姿を織田信長に披露する。
大名としての今川家滅亡後、庇護(ひご)者を北条氏、徳川氏と変えながら流浪する氏真の身の処し方が読みどころだ。従来の氏真像を覆した意欲作の文庫化。(徳間時代小説文庫・902円)
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2022年2月20日 掲載
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