『ドラマで韓国語』
- 著者
- イ・ミオク [著]/大西悠 [編、訳]
- 出版社
- 小学館集英社プロダクション
- ISBN
- 9784796880398
- 発売日
- 2022/02/25
- 価格
- 1,650円(税込)
書籍情報:openBD
「愛の不時着」で学ぶ韓国語 ドラマを教材にした語学本を手掛けた翻訳家に長所を聞いた
[文] 小学館集英社プロダクション
韓国語を学びたいけど、どうしたらいい……?
近年最も人気を博した韓国ドラマのシナリオが、そのままテキストになった『ドラマで韓国語』が話題だ。
発売を記念して、編集と翻訳を担当した大西悠氏に、ドラマで語学を学ぶメリットから効果的な韓国語学習の方法まで、話をうかがった。
■セリフで日常会話を学ぶ
――表紙に、「愛の不時着」はじめ、どこかで目にしたことのある人気タイトルが
ずらりと並んでいますね。
大西:日韓両国で大ヒットした5本の韓国ドラマの台本を教材として使っています。ドラマのワンフレーズだけを取り上げた語学本は、今までにも出ているのですが、こんなにまとまった分量のセリフや、シーンのシナリオをまるっと収録したものって、ありそうで無かったんですよね。
――収録されている5作品には、なにか共通していることがあるのでしょうか。
大西:5作品とも恋愛モノで、このうち4作品には宇宙人や鬼、はたまた北朝鮮の将校といった、非現実的な人物(?)が登場します。教材に取り上げたシーンは、原書の著者がYouTubeでの再生回数が多くて人気が高いものを選んだのですが、なぜか、のちにカップルになる主人公同士が口ゲンカするシーンが多いですね(笑)
――大西さんご自身は、お気に入りのセリフはあるのでしょうか。
大西:ちょっと長いんですけど、『星から来たあなた』に出てくる、
「お前の脳はボトックス打ったのか、シワがないぞ、そう言いたいんでしょう!」
が好きです。チョン・ジヒョン演じる女優のソンイが、美人だけど頭が悪いと世間に叩かれまくったあと、逆上して自虐的に発する言葉なんですけど、とても韓国語らしい言葉遊びだと思います。
この作品の脚本は、のちに『愛の不時着』を手掛けることになるパク・ジウンさんなのですが、この方の書くセリフはウィットに富んでいて、おもしろいです。
■スマホでそのシーンを観ながら、発音もチェック
――いま、韓国ブームによってたくさんの語学書が並んでいますね。韓国ドラマを扱う本書ならではの仕掛けなどはあるのでしょうか。
大西:せっかくドラマが教材ですので、そのシーンを実際に観ながら学べるよう、該当シーンのYouTube動画のリンクをQRコードで掲載しています。手元のスマホで動画を見て、本書のテキストを確認したり、動画を途中で止めたり繰り返したりと、スマホ時代ならではの学習ができます。
特にオススメの使い方は、再生速度を遅く設定して、俳優の発音や口の形をしっかり確認することです。実際のセリフ回しは早口で聞き取りづらかったりするので、遅回しの機能はかなり役に立ちます。
――韓国ドラマで学ぶメリットって、何でしょうか。
大西:ネイティブの日常会話のスピードや表現を学べることだと思います。ドラマには、年齢、職業、出身地、時代、育った環境などの異なる、ありとあらゆる人物が登場しますが、それぞれ使う語尾や単語、抑揚などが全然違います。韓国語教室では学ばないけれど、実際にはよく使われている俗語や方言、略語、流行語などもたくさん出てきます。また、韓国ドラマは世界的ヒットを狙うだけあり、台本がとても精巧に練られているので、質の高い韓国語を学べることもメリットだと思います。
――今回、「翻訳」だけではく「編集」まで手掛けられたのですか。
大西:この本の原書は、英語話者を対象とした語学本でした。日本語は英語に比べて、はるかに韓国語に近いので、日本語話者に必要ない説明はカットし、代わりに原書には無い単語や文法を追加したり、日本語話者だからこそ間違いやすいポイントを解説したりしています。
私自身、韓国語ネイティブではないので、自分でドラマを観ているときに疑問に思ったり、補足説明が欲しいと思った表現や文法を、ふんだんに盛り込みました。
■韓国語を理解すれば、ドラマが何倍も楽しくなる!
――大西さんも以前には韓国語を勉強されたわけですが、外国語を学んだり、マスターするには、どんなことが大切でしょうか。
大西:「好きこそものの上手なれ」なので、楽しみながら学ぶのがいちばん身に付くと思います! おもしろいドラマを観ながら語学まで身に付いたら、最高じゃないですか(笑)。
私も韓ドラが大好きなので、この本を作るのはとても楽しかったです。あと学習で絶対に効くと思うのは、アウトプット。新しく習った単語や文法をすぐに自分で使ってみると、脳と口が覚えてくれます。逆にインプットだけだと、忘れてしまいます。今はSNSなどでアウトプットしやすい環境が整っているので、どんどん韓国語を使って、自分のものにしていってください。
――本書をどんな方に手に取ってもらいたいですか。
大西:ドラマの字幕は、限られた文字数で瞬間的に伝えることがミッションなので、セリフを省略したり、日本人にわかりやすい表現に置き換えたりということがどうしても生じてしまいます。でも言葉を理解できれば、韓国人の視聴者と同じ感覚でドラマを観られるようになるので、楽しめるポイントがグンと増えます。もっともっと韓ドラを堪能するために、この本を活用してもらえたらうれしいです。
私もこの仕事が終わったので、もう一度『愛の不時着』を見返そうと思っています。