みんな「続編を」って簡単に言うけどさ――作家・誉田哲也がシリーズものを描く理由

エッセイ

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アクトレス

『アクトレス』

著者
誉田哲也 [著]
出版社
光文社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784334914417
発売日
2022/01/19
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

みんな「続編を」って簡単に言うけどさ 『アクトレス』著者新刊エッセイ 誉田哲也

[レビュアー] 誉田哲也(作家)

 嘘をつくな、と思われるかもしれないが、私はほとんど、シリーズというものを意識して書き始めたことがない。

 結果的には四部作になった「武士道シリーズ」も、一作目の『武士道シックスティーン』で終わるはずだった。それを担当編集者が「16があるなら17も書けるでしょう」と、俗に言う「無茶振り」をし、それが三回繰り返された結果あの四部作が出来上がった、というのが偽らざる事実だ。

「ジウ・サーガ」なんて、つい最近できた言葉だ。あれだって最初の『ジウⅠ~Ⅲ』で終わったはずなのに、担当編集者(前出とは別人)が「もう美咲(みさき)は出てこないの?」「東(あずま)が主人公ならありでしょ」と駄々を捏ね、それが『国境事変』になり、他所(よそ)から引っ張ってきた『ハング』も合流して「歌舞伎町シリーズ」という新たな枠組ができ、結果「ジウ・サーガ」と呼ばれるようになったのだ。誓って言うが、この呼称は私が決めたものではない。「姫川玲子(ひめかわれいこ)シリーズ」に対抗する呼称が欲しかった担当編集者が言い始め、まあ、それならいいかなぁ、と私が受け入れたことで正式なシリーズ名として採用された、というのが、これまた偽らざる事実である。

 で、『ボーダレス』。そして今回の『アクトレス』。

 これこそシリーズ化なんて全く考えていなかったのに、ドラマ化されたことから、どこからともなく「続編を」という話が湧いて出てきた。ただし、この作品には『13日の金曜日』的な「構造を踏襲する」書き方と、登場人物を継承してその後日談を書く、いわば「普通の続編」という二通りの書き方が考えられた。さて、どうしたものか。

 結果、登場人物に対する愛着が勝った、ということでしょう。森奈緒(もりなお)、片山希莉(かたやまきり)、市原琴音(いちはらことね)、八辻芭留(やつじはる)らが再登場し、東京を舞台に新たなる困難に立ち向かうことになった。しかし、こうなると不思議なもので、もう一作書いて三部作にしたくなる、というのも、私の偽らざる気持ちではある。

光文社 小説宝石
2022年3月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

光文社

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