『座敷わらしのいる蔵』
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<東北の本棚>小さな奇跡にほっこり
[レビュアー] 河北新報
縁結び、病気の治癒など、角田市の蔵に座敷わらしがいるという。商家に嫁いだ女性が、身の回りに起こるささやかな奇跡と幸せをつづる。心温まる読後感に、読者も傍らに座敷わらしがいるのを感じ取ることだろう。
座敷わらしが「見つかった」のは、市中心商店街にある業務用食品店「マルセン」の蔵の2階。明治初期に建った元呉服商の蔵だ。
発端は東日本大震災だ。近所の蔵は壁がはげ落ちるなどの被害に遭う中、マルセンの蔵は瓦1枚落ちず、「パワースポット」と話題になった。お笑いコンビ「サンドウィッチマン」のテレビ番組の取材が2012年にあり、「婚活パワーが欲しい」と蔵の入り口の柱に抱き付いた女性アナウンサーは約半年後に電撃結婚した。
営業マンが「お菓子ちょうだい」と言われたり、不登校だった女児は座敷わらしに会って再び小学校に通えるようになったり。著者の夫で社長の高橋克裕さんの携帯が蔵の前で突然鳴り、自動音声で「いつも、あいしてくれて、ありがとう」としゃべったこともあったという。
「蔵の2階がほっこりと優しい空気で包まれているよう」と著者。苦労を経験しながら人に温かく接する夫婦の人柄が、座敷わらしを呼び寄せたに違いない。(会)
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幻冬舎03(5411)6440=1430円。