冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ!』いしづかあつこ監督インタビュー(2)

インタビュー

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グッバイ、ドン・グリーズ!

『グッバイ、ドン・グリーズ!』

著者
Goodbye,DonGlees Project [著]/いしづかあつこ [著]/山室 有紀子 [著]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784041026519
発売日
2022/01/21
価格
638円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ!』いしづかあつこ監督インタビュー(2)

[文] カドブン

現在公開中の映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』は15、16歳の少年たちが冒険を繰り広げ、やがて炎と氷の国・アイスランドにたどり着く、瑞々しい成長物語。小説版も大好評で、3人の冒険を新たな角度から楽しめる一作となっています。
本作を演出を手掛けたのは、世界で絶賛された『宇宙よりも遠い場所(よりもい)』のいしづかあつこ監督。今回はいしづか監督に、アフレコの印象やご自身の冒険エピソードを語っていただきました。

▼前編はこちら
https://www.bookbang.jp/review/article/728379

冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ...
冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ…

――本作の主人公である男子3人組を演じているのは、人気・実力共にトップクラスの声優である花江夏樹さん(ロウマ役)、梶裕貴さん(トト役)、村瀬歩さん(ドロップ役)の3人です。演じるにあたって、監督からはどんなオーダーを出されたのでしょうか?

いしづか:高校生ではあるけど、あまり大人っぽくならないように、リアルな男子中学生くらいの幼さでやってほしい、とお願いしました。アニメで高校生というと、もっと大人びたキャラクターになりがちなんですが、ロウマたちは高校1年生。ついこの間まで中学生だった男の子で、そんなにしっかりしてない……というか、基本的にバカなんです(笑)。そこで「深く考えずに、思ったことをそのまましゃべってください」、つまり「芝居をしないで」という、演じる側にとっては難しいディレクションをしました。でも3人とも、脊髄反射でしゃべっているのにセリフ一つひとつの感情がすべてまっすぐ伝わってくるという、不思議な現象を起こしてくれました。

――それぞれのお芝居の印象はいかがでしたか。

いしづか:花江さんの声はすごく柔和で大人しくて、ともすれば弱くてウジウジしたキャラクターにもなりかねないのに、背筋を伸ばすといきなり凜とした主人公になる。柔らかいのに芯があるという不思議な両面性が、ロウマというキャラクターを体現していると思いました。トトは周囲のバランスを取りながらツッコミ役として喋り続けなくてはいけない、非常に忙しいキャラクター。梶さんはそこを見事にさばききってくれましたね。そして村瀬さんは、彼の持つ性別も年齢も感じさせない感じ、声変わりをしたのかしてないのか曖昧な感じが、中性的なドロップにぴったりでした。

冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ...
冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ…

――本作は少年たちの冒険譚ですが、監督の人生一番の冒険は何ですか?

いしづか:芸大生の頃、単身ロンドンに行ったことです。ふと思い立ってパスポートを取り、サマースクールに行ったんですが、いざ行ってみたら現地で知り合った友達と公園でずっとバドミントン(笑)。でもこの経験のおかげで、「意外と世界って行けるんだ」と思えたんですよね。パスポートすら持っていなかったけど、いざ行こうと思ったら本当に行けたし、無事に帰ってこられたし、現地で人と交流することもできた。そして「日本と違う国が実在する」ということも実感できた。その感覚は非常に大きかったです。

――『よりもい』や本作では友情をテーマにされてきましたが、今後はどんなテーマに取り組みたいとお考えでしょうか。

いしづか:作品はお客さんに届いて初めて完成というところがあるので、まだ『グッバイ、ドン・グリーズ!』に関しては“挑戦の途中にいる”という感じがしています。作品を作ること自体、自分が描きたいテーマを見つめ直す機会にもなるので、常に次はどんなテーマを描こうか考えているところがあります。ただ『よりもい』は友情がテーマでしたが、『ドン・グリーズ』は友情がテーマではないかもしれません。どちらかというと、一人の少年の世界が変わる瞬間を描こうとした物語、というほうが正確な気がしますね。ちっぽけな人間と世界という哲学。ロウマ、トト、ドロップ、彼ら一人ひとりの人生と、世界の大きさ。それを描くために、友情物語というエンターテインメントの力を借りたという気がします。だからお客さんには友情エンターテインメントを楽しんでいただきつつ、その裏に込めたメッセージのようなところが届いたら嬉しいですね。

■プロフィール

いしづかあつこ
2004年MADHOUSEに入社し、多数のMADHOUSE作品で監督・演出を担当。監督として、TVシリーズ『ノーゲーム・ノーライフ』『ハナヤマタ』『プリンス・オブ・ストライド オルタナティブ』と精力的に作品を生み出す。2017年『ノーゲーム・ノーライフ ゼロ』で劇場版初監督を、2018年にはオリジナルアニメーション『宇宙よりも遠い場所』の監督を務めた。

■作品情報

■映画『グッバイ、ドン・グリーズ!』
大ヒット上映中!

©Goodbye,DonGlees Partners
©Goodbye,DonGlees Partners

【STORY】
東京から少し離れた田舎町に暮らすロウマは、周囲と上手く馴染むことができない少年。彼は、同じように浮いた存在であったトトと二人だけのチーム“ドン・グリーズ”を結成する。その関係はトトが東京の高校に進学して、離れ離れになっても変わらないはずだった。
「ねえ、世界を見下ろしてみたいと思わない?」
高校1年生の夏休み。それは新たに“ドン・グリーズ”に加わったドロップの何気ない一言から始まった。ある出来事から、山火事の犯人に仕立て上げられてしまったロウマたちは、無実の証拠を求めて、空の彼方へと消えていったドローンを探しに行く羽目に。ひと夏の小さな冒険は、やがて少年たちの“LIFE”(生き方)を変える大冒険へと発展する。

【STAFF&CAST】
監督・脚本:いしづかあつこ
キャラクターデザイン:吉松孝博
出演:花江夏樹 梶 裕貴 村瀬 歩/花澤香菜/田村 淳(ロンドンブーツ1号2号) 指原莉乃
主題歌:[Alexandros] /「Rock The World」(ユニバーサルJ / RX-RECORDS)
配給:KADOKAWA

公式サイト
https://donglees.com/
公式Twitter
https://twitter.com/gb_donglees

©Goodbye,DonGlees Partners

■紹介書誌情報

冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ...
冒険で感じた「世界にだって行ける」という手応え 『グッバイ、ドン・グリーズ…

角川文庫
『グッバイ、ドン・グリーズ!』
著者 山室有紀子
原作:Goodbye,DonGlees Project
脚本:いしづかあつこ
発売日:2022年1月21日
定価: 638円(本体580円+税)

取材・文:熊倉久枝 

KADOKAWA カドブン
2022年03月09日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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