『オリックスはなぜ優勝できたのか』
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四半世紀の低迷からの脱出
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
昨年のパ・リーグを制したのはオリックス・バファローズ。球界で最も長く優勝から遠ざかっており、前年まで二年連続で最下位に沈んでいたチームだ。
本書『オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年』は、長く野球記者を務めた喜瀬雅則氏が、この奇跡の裏側を探ったものだ。
イチローを擁し、震災を乗り越えて掴んだ一九九五年・九六年のペナント以来、オリックスは長い低迷期に入る。その間、近鉄との合併や本拠地の移転など、チームは様々な荒波にさらされ、十三人もの監督が起用された。著者はこれら監督や中心選手などに丹念にインタビューを重ね、長きにわたったトンネルの時代を描き出している。誰もが勝ちたいと望み、努力を重ねながら、何かが噛み合わない。うまくいかない組織とはこうしたものなのだろう。野球ファンなら、あの時のあの件はこういうことだったのか、と得心することがいくつもあるはずだ。
長い暗黒期から抜け出すきっかけは、長期的視野に立ったチーム改革であった。明確なスカウト方針の徹底、施設移転による育成の強化。山本、吉田、宗らの中心選手は、自然偶然に育ったわけではないのだ。
単なるサクセスストーリーばかりでなく、志半ばで去った者、うまくいかなかった試みも取り上げられており、ストーリーに厚みを与えている。ビッグボスの派手なパフォーマンスもいいが、今季はオリックスにも注目してみたい。