<東北の本棚>栄光の裏にあるドラマ
[レビュアー] 河北新報
沢村栄治から大谷翔平(岩手・花巻東高出)まで、著名なアスリート54人の名前が並ぶ。スポーツライターの著者が焦点を当てたのは、天才たちの才能が開花した瞬間だ。栄光の裏に隠された意外なドラマを知ることができる。
東北関係では、大谷のほか、マラソンの円谷幸吉(須賀川市出身)、柔道の斉藤仁(青森市出身)、水泳の長崎宏子(秋田市出身)、フィギュアスケートの荒川静香(宮城・東北高-早大出)らを紹介。
阪急の元エース山田久志(能代市出身)は、1971年の日本シリーズで、巨人の王貞治に打たれたサヨナラ3ランが転機になった。王にとっても生涯で最も印象深い一打で、王の前に出塁した長嶋茂雄の中前打も多くの人の人生を変えたというから複雑だ。
このほか、バドミントンの高橋礼華(宮城・聖ウルスラ学院英智高出)は小学生の頃に背の低さを生かす努力をしたこと、大リーグの大谷に左越え本塁打が多いのは、リトルリーグ時代の練習が原点であることなど、興味深い話が尽きない。
著者が「若者だけでなく、六十代、七十代を越えた中高年にも未来は広がっています」とつづるように、才能はいつどこで開花するかは分からない。幅広い年代の読者に刺激を与えるだろう。(裕)
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