『マンガでわかる 痔の治し方』
- 著者
- 平田 雅彦 [著]/ヒヅメ [著、イラスト]
- 出版社
- 小学館集英社プロダクション
- ジャンル
- 文学/日本文学、評論、随筆、その他
- ISBN
- 9784796878951
- 発売日
- 2022/03/16
- 価格
- 1,430円(税込)
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肛門は死ぬ間際まで使います 40万人を診てきた専門医が語る「痔」との付き合い方
[文] 小学館集英社プロダクション
調査によると「痔」の症状を抱えている日本人は3人に1人。誰にでも起こり得る一般的な病気ですが、「医者に行くのが恥ずかしい」「手術されるのはこわい」といった理由で、重症化してから肛門科を受診する例が多いと言います。
今回、痔の自覚症状がある方に向けた『マンガでわかる痔の治し方』を刊行された肛門科医の平田雅彦先生に「痔」との付き合い方について聞いた。
痔になる原因や治し方、そもそも痔とはなんなのか? これまでに40万人以上を診てきた平田先生の考え方とは?
■痔は虫歯の次に多い「国民病」
――この数年、お尻のトラブルが増えているのはなぜでしょうか。
平田:じつは、日本人の3人に1人が「痔の自覚症状がある」と回答した調査データがあります。さらに自覚していない人まで含めると、約80%に痔を認めるほど、痔はポピュラーな病気なんです。
また近年は、このコロナ禍で在宅勤務が増加し、すっかり定着しました。通勤やオフィス内の移動が減ったことで、座っている時間が長くなっています。座りっぱなしだとお尻はもちろん、全身の血液循環が悪くなる。すると、リンパ球や栄養が運ばれなくなり、老廃物も流れない。次第に細胞は炎症を起こしてしまい、痔の原因になってしまうのです。だから今、お尻に異変を感じ始めている人や症状が悪化する人が増えています。
――本書のなかで「受診するまでに7年かかっている」というセリフがありました。なぜこんなに放置する人が多いのでしょうか。
平田:私の医院に来られた360人以上の患者さんにアンケートを取りました。初めてお尻に違和感を覚えてから受診までにかかった平均期間が7年でした。
放っておく理由は3つ。1つめは、肛門科に行けばすぐに手術されてしまうと思いこんでいること。2つめは、手術は痛いというイメージ。3つめは、手術しても再発する不安があること。
でも、アメリカやイギリスなどの先進諸国では、手術率は1割以下です。9割以上の患者さんは病院に駆け込んでも手術を受けていないわけです。
ですから、違和感があればまず受診。初期の段階で治療を始めれば、手術なしで改善していくことができるのです。
■痔は「生活習慣病」、切らずに治せる
――先生は「痔は自分で治せる」と強調されています。なぜ自分の力で改善していくことができるのでしょうか。
平田:痔は「生活習慣病」なんです。痔になる原因は、その方の生活習慣にあります。つまり、痔になれば、生活習慣を正しく改善していく必要があります。
健康な生活の基本は、快眠・快食・快便。そのために、本書では食物繊維の多い食事や朝の習慣、運動のしかた、トイレの使い方などを具体的に紹介しています。ただ医師がアドバイスや指導することはあっても、患者さんご自身が実践するしか方法はありません。自分の生活のどこが悪いのか、生活を見直すところから始めます。
しかも、痔のために食生活を変えたり運動を増やしたりといった生活改善をおこなうと、血圧や血糖値、中性脂肪の数値も改善され、ほかの生活習慣病まで解消することがよくあります(笑)。
――自分で治す、つまりセルフケアを実行していく際に注意することはありますか。
平田:重要なことが3つあります。1つめは、まず受診して痔なのかどうか、病名をきちんと確かめること。2つめは、指導者の存在。専門家の適切な指導のもと、実践していく必要があります。3つめは、長く続けられること。
手術はたしかに即効性はあります。しかし、また同じ生活を続けていけば痔になってしまうんです。そういう意味で、痔は虫歯と同じようなものですね。虫歯ができた。痛い。だから削った。でも歯磨きしなければ、また虫歯になりますよね。つまり、手術はその場しのぎでしかない。せっかく手術しても、これまでと同じ生活を続ければまた痔になってしまうんです。
――本書で、「やらなかった頃に比べたらプラス」「始めた時点でゼロ以上」などと語っておられます。そんなにハードルが低くても効果はあるのでしょうか。
平田:はい。まずは始めること、継続することです。たとえば、運動も腹筋を1日50回もしなくていい。5回でいい。階段を上るのだって1日1回でいい。やろうと思った時点で、もうプラスなんです。
ある弁護士の患者さんは、「出血が止まらない」という状態でした。そこで、事務所のある最寄り駅より一つ手前の駅で降りてもらい、片道25分を往復で歩くように指導しました。
始めは「めんどうだ、カバンが重い! なんで歩かなくちゃいけないんだ!」とイヤイヤだったんですが、数ヶ月もすれば、痔のはれは治まり、出血もなくなりました。今では、週末も歩いているそうです(笑)。
だから、毎日少しでいい。1年続ければ、まったく違う結果になります。
■「100年肛門」の時代になった
――今日の習慣が、1年後、10年後のお尻をつくるわけですね。
平田:今や、人生100年の時代です。歯や心臓など、あらゆる臓器を長く使うわけです。肛門も100年使うんです。死ぬ間際まで使います。
弥生時代の平均寿命は27年だったと言われています。その時よりもはるかに長く使い続けるわけですから、元気なお尻を長持ちさせなければいけない。そのためには、90歳からの生活改善では遅い。今すぐにでもケアを始める必要があるのです。
――本書は漫画家のヒヅメさんとの共著ですね、しかも全篇が漫画で構成されています。
平田:本書で最も大事なのは、医者の視点で書いていないということです。痔の経験があるヒヅメさんの、つまり患者さんの視点で語っているんです。
だから、私のアドバイスに対して「それはアプリで簡単にできる」「今どき、そんなことはやってられない」とヒヅメさんから意見が出れば、それに代わる現実的な方法をヒヅメさんが提案していますし、ヒヅメさんが患者さんの代弁者として、まず知りたいこと、疑問に思うことを徹底的に尋ねてくれました。
そうすることで、ふだんの忙しい生活のなかでも簡単に始められて、しかきちんとも続けられるノウハウを紹介することができました。