思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネにぴったりの図鑑――『角川の集める図鑑 GET! 人体』現役、東京学芸大学教育学部生によるレビュー

レビュー

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角川の集める図鑑GET! 人体

『角川の集める図鑑GET! 人体』

著者
坂井 建雄 [監修]
出版社
KADOKAWA
ジャンル
自然科学/医学・歯学・薬学
ISBN
9784041118542
発売日
2022/03/10
価格
2,200円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネにぴったりの図鑑――『角川の集める図鑑 GET! 人体』現役、東京学芸大学教育学部生によるレビュー

[レビュアー] カドブン

■学校の先生や司書を目指す現役大学生が、『角川の集める図鑑 GET! 人体』を本気レビュー!

■『角川の集める図鑑 GET! 人体』

思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネ...
思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネ…

■『角川の集める図鑑 GET! 人体』レビュー

レビュアー:東京学芸大学教育学部3年 松本さくら

■自分の体のこと、どれくらい知ってる?

 体とひと言に言っても、筋肉、内臓、骨など、わたしたちの体は多くの器官からできている。しかし、それを常に感じて生活している人はほとんどいないだろう。現在22歳であるが、自分の体についてどれだけ知っているかと聞かれると自信がない。「食べたものがうんちになって出てくるのは何時間後?」これは『角川の集める図鑑GET! 人体』の帯に書いてあった文章である。正直に言って、ドキッとした。理科や生物といった多くの授業でも、そんなことは教えてもらえなかった。では知らなくてもいいことなのだろうか、いやそんなことはないはずだ。この体と、自分は一生を添い遂げる。周りの環境が変わっても、自分の体だけは自分のものだ。22歳になってからでも、この図鑑を読めてよかったと心から思う。

 こんな堅苦しいことを書いていると、わたしはとても頭のいい賢い人物のような気がしてくるが、決してそんなことはない。今でも勉強はそんなに好きではないし、ましてや得意では全くない。自分から進んで図鑑を手に取るような子どもではなかったと言えるだろう。正直に言って、今回もポジティブな気持ちで図鑑をめくったわけではなかった。しかし、序盤から心をつかまれることになる。

思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネ...
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 このクイズに全問正解できる大人は一体どれくらいいるのだろうか。ちなみにわたしは3問しか正解できなかった、右下に書いてあるように、「こんなの、考えたこともなかったな…」というのが率直な感想である。図鑑には体に関する知識だけでなく、このようなクイズやコラムといった要素もあり、読者が飽きないよう工夫が施されている。クイズの答えを探す、という目的で図鑑のページをめくることができ、わたしのような気持ちの読者も意欲的に読み進められる。コラムは全部で66か所もあり、「ネコは暗い場所でもよく見える!?」「すねをたたかれるとどうしていたいの?」など、好奇心をくすぐられるものばかりである。また、ほとんどのページが見開き2ページで一つの器官やテーマを扱っているので、どのページを開いてもそこから読み進められるようになっていることも、この図鑑の特徴と言えるだろう。全部で200ページ近くある図鑑を一気に読むことは至難の業だが、気が向いた時に何ページか眺めることはそんなに難しくない。パラパラとめくっているだけで、知識は十分身につくはずだ。

■小学生から高校生まで

 現在わたしは教育学部で学んでおり、小学校の教育実習にも一度行かせていただいた。自分が思っているよりも、子どもたちが何にでも好奇心旺盛で、すぐに色々なことを知りたがることには驚いた。特に小学校低学年の子どもは、様々な疑問を抱きそれを知りたいと思う欲求が強いように感じられた。その興味が自分自身の体に向いた時、この図鑑があればほとんどの疑問が解決されるだろう。そして、すぐに他の疑問を見つけ、多くのページを何度も読み返し、人体のことに関しては知らないことがない、というような子ども博士になってしまうかもしれない。ただ、この書き方では単なる子ども向けの図鑑だと思われてしまいそうなので、補足もしておきたい。

 わたしが読んでいて特に面白いと感じたのは、56~57ページの「からだをささえる・動かす③ 筋肉」である。

思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネ...
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 わたしは現在部活動に励んでおり、筋トレを行うことも多く、筋肉に関する専門的な知識は、普通の人よりはあると自負している。しかし、遅筋と速筋で筋肉の色が異なり、それが刺身の赤身や白身に影響していることや、フィラメントという部位が重なり合って筋肉が縮むことなど、まだまだ知らないことはたくさんあった。しかもその知識が、カラフルなイラストと平易な文章で書いてあるのだから、小難しい授業よりもよっぽどとっつきやすい。子どもであれば最初は絵だけで大まかな内容を理解し、成長してから文字を読み深く理解する、といったこともできるだろう。マメ知識やQ&Aも、思わず人に話したくなってしまうような知的な雑学が豊富である。
 また、140~141ページの「きずを治す血小板」や、146~147ページの「情報を得て攻撃する白血球」は、ほとんど中学・高校の理科のレベルに等しいと言える。

思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネ...
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思わず人に話したくなってしまうような知識がもりだくさん! 親子の会話のタネ...
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 特に獲得免疫の部分は、わたし自身大学受験で苦戦した部分だったので、小学生をメインターゲットとする学習図鑑にも、このレベルの内容が載っていることに驚いた。ヘルパーT細胞やキラーT細胞といったリンパ球がデフォルメ化され、イラスト化されている部分などは非常にわかりやすく、受験生にとっても有益な内容だ。小さい子どもにあげるイメージの強い図鑑だが、受験生にプレゼントしても非常に喜ばれるだろう。一冊持っていれば、小学校から高校生まで長く使える図鑑であるとも言える。

『角川の集める図鑑GET!』はシリーズも充実している。その中で、恐竜や昆虫などと比べると、人体はかなりとっつきにくい図鑑に思われるだろう。しかし、角川の図鑑は子どもにもわかりやすく、その上大人でも知らなかった知識が盛りだくさんの、優れた図鑑である。これを購入して一つ困ることがあるとすれば、子どもが図鑑で得た知識を披露するために、興奮して保護者にクイズを出す可能性が高いということくらいであろう。その時はぜひ、子どもの話を聞いてあげてほしい。知識というのは一人で得るよりも、複数の方が定着する。それにこの図鑑が、子どもと保護者の会話のタネとなれば、レビューを書いた身としてわたしも嬉しいからである。

▼『角川の集める図鑑GET!』シリーズ一覧はこちら
https://zukanget.com/

■ライタープロフィール

ペンネーム:松本さくら 教育学部3年

<子どもの頃の図鑑の思い出>
動物の図鑑でマメ知識を読むことが好きでした。キリンは首だけでなく舌も長いと知り、動物園に行った際にキリンに餌やりをして、それが本当だと実感できて感動した思い出があります。

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■作品紹介

角川の集める図鑑GET! 人体
監修 坂井 建雄
定価: 2,200円(本体2,000円+税)
発売日:2022年03月10日

考える力を育む、いちばん新しくてわかりやすい人体図鑑!
「かぜをひくと、熱が上がったりせきやくしゃみが出るのはなぜ?」「しゃっくりはどうして起こるの?」、人間のからだには不思議に思うことがたくさんあります。そんなからだのナゾを解き明かしながら、人体の奥深さを体感できる図鑑です。最新研究が反映され、新型コロナウイルスなどの最新トピックも載っている”新しい”人体図鑑として楽しめます。
この図鑑では、臓器や細胞などを「部位」ではなく「役割」に着目して構成しているので、自分のからだにあるどんなものがどんな働きをしているのかが理解しやすくなっています。
各章の章末には「人体の発見と医療の歴史」コラムが掲載され、これまでどのように人のからだについて明らかになり、医学が発展したかの世界史を学ぶこともできます。感染症の流行の歴史も取り上げています。
『どっちが強い!?』シリーズの人気キャラ・ジェイクたちと一緒にナゾトキをしながら読み進めていくので、受動的に読むだけではなく、自然と自分の頭で考える力が養われていきます。
詳細:https://zukanget.com/book05.html

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KADOKAWA カドブン
2022年03月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

KADOKAWA

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