大阪のテレビ局を舞台にした連作短編集だ。悩みを抱えた4人の男女が、うまくいかない日常に折り合いをつけ、一歩踏み出す様子を描いている。
登場するのは、不倫経験のある40代独身女性アナウンサー、娘と2年冷戦状態のニュース番組デスク、好きになった同僚がゲイだったタイムキーパーの女性、人生に閉塞(へいそく)感を覚える非正規の30代の男性AD。仕事で人と関わる中で自分の本音に気づいたり、他人の言葉に救われたり。心にふっと光が差す瞬間を繊細な心理描写でつづる。傷を抱えたままでいいと教えてくれる筆者の視線は優しい。(幻冬舎・1650円)
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2022年3月27日 掲載
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