ざっくりとしたストーリーで世界経済史を俯瞰する良書

レビュー

3
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教養としての金融危機

『教養としての金融危機』

著者
宮崎 成人 [著]
出版社
講談社
ジャンル
社会科学/経済・財政・統計
ISBN
9784065267158
発売日
2022/01/19
価格
968円(税込)

書籍情報:openBD

ざっくりとしたストーリーで世界経済史を俯瞰する良書

[レビュアー] 篠原知存(ライター)

 リーマンショックを予測できた人は少なかったはず。濡れ手で粟の金融商品に狂奔した金融機関が行き詰まるのは自明のことなのに。なぜそんなことになったのか……。

 世界経済史を振り返り、この一世紀に起きた国際的な金融危機について解説していく。〈「なるほど、そういう話だったのか」という「大まかな真実」で話を紡いでいった〉と記すように、細部よりはざっくりとしたストーリーを重視。

「教養」というタイトル通りに、評者のような素人が学ぶのにピッタリの内容だが、金融に詳しい人も、歴史を俯瞰することで新たな気づきが得られるかもしれない。

 9つの危機が取り上げられる。最初にして最大という危機は、第一次大戦後に起きた金本位制下での国際金融システムの崩壊。対応を誤ったことで大恐慌と第二次大戦をもたらした。その反省から〈このような失敗を繰り返さないことが、国際社会の共通認識〉になったという。

 その後も危機は何度も訪れる。ポンド危機、ニクソンショック、オイルショック、円高パニック、ブラックマンデー、アジア通貨危機……。

 元財務官僚で世界銀行駐日特別代表なども務めた著者は、集団心理、モラルハザードなど、それぞれの危機をもたらした原因とパターンを分析し、有効だった対処法を解説していく。そしてこう記す。

〈100年間の経験が我々に教えるのは、「必ず次の危機は起こる」ということです〉

 もちろん諦めではなく、経済構造の不断の改革を願っての言葉だ。

 本書は、ロシアによるウクライナ侵攻の前に刊行されたので、直接の言及はない。だが悪影響は世界経済全体に広がりつつある。エネルギーや食料品の価格高騰によって、物理的な距離とは関係なく、生活や経済は戦時下の様相を見せ始めている。私たちは早くも「次の危機」の渦中に投げ込まれてしまったようだ。

新潮社 週刊新潮
2022年4月7日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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